10月5日に「マイナンバー(社会保障・税番号)法」が施行され、順次個人番号通知カードの配布がはじまっている。運用開始は2016年1月から。まずは所得税や住民税などの「税」、健康保険や雇用保険などの「社会保障」、被災者台帳の作成などの「災害対策」といった比較的悪用されにくい3分野の利用にとどまるが、将来的には預金口座、医療情報にも紐づけられ、保険証に限らず運転免許証や図書館カードと「個人番号カード(通知カード到着後に申請)」を一本化することも検討されている。政府は「役所での手続きが簡素化される」「情報共有がスムーズになることで人的ミスが軽減される」などとメリットを前面に押し出すが、制度を不安視する声も多い。考えられる代表的なデメリットを紹介しよう。

一番の不安は情報漏えいである。5月末に100万件を超える年金の個人情報流出が発覚したこともあり、行政機関のセキュリティに対する国民の信頼感は低い。また、従業員の個人番号を集める企業側のセキュリティも万全とは言えない。もっとも、個人情報にアクセスするには「マイナポータル」というサイト(来年1月オープン)に個人番号カードを読み込ませたうえでパスワードを入力する必要があり、第三者に盗み見される危険は少ないといえる。しかし、「番号の漏えいはありうる」ので自衛策をとる必要があるだろう。

そもそも、個人番号を集めるための労力も企業にとっては大きい。飲食業や小売業などアルバイトの数が多い業界、人材派遣業など流動性が高い業界は、「新規雇用者の番号収集」「不要になった番号の処理」の両面で苦労することになりそうだ。

マイナンバーが付番されるのは個人だけではない。企業にも「法人番号」が与えられる。すると、法人登記簿への記載がありながら、厚生年金適用事業所の登録がない事業所=厚生年金保険に未加入の企業があぶり出されてしまうのだ。従業員と折半で負担する保険料を払えず、未加入を決め込む中小零細企業は少なくない。強制的に保険料を徴収しようとすれば、倒産が相次ぐことになる。今後、「法人」から加入義務のない「個人事業主」に形態を変える経営者が増えるのは必至だ。

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