サイバーゼネコンに牛耳られた住基ネット
税金や年金など社会保障に関する個人情報を一つにまとめる「国民共通番号制度」導入に向けた検討作業が進んでいる。今年2月に大臣クラスによる「共通番号制度に関する閣僚級検討会」が発足、6月末には素案ともいえる中間報告が発表された。
それによると、使用する番号には3つの案がある。具体的には、(1)基礎年金番号、(2)住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)上の住民票コード、(3)新たな番号の創設、だ。中でも、(2)の住民票コードを活用して新しい番号を割り振る案が最も有力視されている。
共通番号の利用範囲についても、「税金のみ」「税金+年金などの社会保障」「幅広い行政分野に利用」という3つの選択肢から絞り込んでいくという。
私はこの問題について、かねてからこう提唱してきた。国民全員にID番号を持たせ、税金や社会保障のみならず、運転免許証や健康保険証、パスポート、厚生年金手帳から印鑑登録証まで、あらゆる個人情報を一つのIDで一元的に管理するコモンデータベースを構築すべきである――と。したがって共通番号制度の導入に異論はないが、中間報告で示された方向性には正直、賛同できない。
まずシステム面で問題なのは、住基ネットの活用を優先することだ。そもそも基礎年金番号は国民全員が持っていないし、新しい番号の創設は時間もコストもかかる。全国民に固有の番号が割り振られている現行の住基ネット・住民票コードを使うのが一番効率的だという。
しかし住基ネットは、各自治体がサイバーゼネコンの食い物にされてバラバラにシステムをつくった。構築費は何と805億円であるが、そこに収容されている情報は約10ギガバイト。二層式DVD 1枚に収まる程度であり、その運用に年間190億円もかけている。しかし利用率は0.7~1.0%であり、政府のつくり出した無駄の中でも突出したもの。当然かなり幼稚な連中がシステム設計しているので融通が利かないし、後述する拡張性にも技術的な限界がある。日本の電子政府の基となる汎用的なデータベースをつくるのであれば、当然最新の技術とシステム要件を満たしたものをゼロからつくるほうが安いし早い。過去の過ちと恥の上塗りだけは避けなくてはいけない。