任天堂のカリスマ経営者として知られる岩田聡社長(当時)が、7月に55歳という若さで亡くなった。岩田社長は、2004年に携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を、06年に家庭用ゲーム機「Wii」を発売し、どちらも大ヒットさせている。そんな岩田社長が患っていたのは「胆管腫瘍」である。昨年、手術を受けて静養していたが、決算発表などの場には姿を見せていた。それだけに、「なぜ」という思いを禁じえない。あまり耳慣れない病名だが、「胆管腫瘍」とは一体どんな病気なのか。消化器外科医で、日本赤十字社医療センター内視鏡診断治療科部長を務める永岡栄医師に聞いた。

「発表は『胆管腫瘍』ということですが、おそらく『胆管がん』だと思われます。胆管がんの主な症状は黄疸。黄疸になると、皮膚や白目が黄色くなり、尿は茶色く、便は白くなります」

発症年齢は40代後半~50代頃から徐々に増え、60代でもっとも多くなる。これは、まさに岩田社長の年齢とも重なっている。女優の川島なお美さんも闘病中だ。胆管がんは、治療可能な早期発見が最も難しいがんの1つ。がんの進行が異常に速いのだ。

「胆管がんになると、ALPの数値が上昇するため、血液検査で早期発見することができます。また、腹部超音波検査で、がんや拡張した胆管を発見することもできます。ただし、ほとんどの企業では毎年超音波検査を行うことはありません。そのため、早期発見できない人が多いのが現状です」

初期の自覚症状である黄疸に気づいたときには、すでにがんが進行して手遅れになっているケースが多い。

「早期であれば手術で治ることもありますが、手術できたとしてもがんを完全には除去できないことも多く、再発しやすいとされています。再発しなかった場合も、『胆管炎』を発症して死に至るおそれがあります。抗がん剤や放射線治療の効果が出にくく、手術以外の有効な治療法がないという点から見ても、難治性のがんだと言えるでしょう」

業績回復を試みていた任天堂にとっても、ゲーム業界にとっても残念な急逝だった。岩田社長のご冥福をお祈りしたい。

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