高額「300万円」なのに、4カ月待ち!

社会保険労務士の著者は、最近あるモノを発注した。それは「金庫」である。背丈ほどの金庫を2台注文した。顔認証で解錠できる最新型である。費用は300万円だ。ところが、発注する際に、メーカーから言われた。

「あのー、申し上げにくいことですが、納品まで4カ月かかります」

著者は、思わず「エッ」と、声をあげてしまった。それでは間に合わないからである。何に間に合わないかというと、マイナンバーだ。マイナンバーはこの10月から国民へのカード送付が始まり、来年1月から制度が本格的にスタートする。それに備えて保管する金庫が必要になった。

著者は、哀願するような口調でメーカーに伝えた。

「10月に間に合わせてください」

著者のような零細社会保険労務士事務所にとって、この金庫の負担は大きかった。「なんで、私がこんな負担をしなければいけないのか?」と、見積書を見ながら、無性に腹が立ってきた。

「安倍さんに請求書を送りつけてやろうか!」

▼マイナンバーはアベノミクスの奥の手

このように、いま日本全国で、マイナンバーの導入に備えて、多くの会社が設備投資に踏み切ったり、従来なかったコストを払ったりしている。それは、マイナンバー法が民間企業に対して「安全管理措置」(いわゆる情報セキュリティー)というものを求めており、それを怠り情報漏えいしたら懲役・罰金を科すとしているからである。

ちなみに、マイナンバー導入のために内閣府が作成したガイドラインにはこんな言葉が溢れている。

◎ファイヤウオール◎ウイルス対策ソフト◎施錠可能なキャビネット◎シュレッダー◎追跡可能な移送手段(書留等)◎間仕切り◎セキュリティーカードシステム◎セキュリティーワイヤ◎暗号化……などなど。

このため、会社側は設備投資などの対応に追われているのだ。関連業界は特需に沸いている。

著者は、ガイドラインを見ながら感じた。これはひょっとしたら、安倍首相の経済対策なのではないかと。つまり「アベノミクス第●番目の矢」ということで、民間企業にオカネを使わせる政策だったのだ。