FPが、夫と妻にあえて真逆の「耳打ち」をする理由
「離婚したので、これからのお金を考えたいんです」
と、離婚したての方からご相談をいただいたときに、必ず説明するのが離婚時の年金分割のことです。
「なんですか、それ?」
という言葉が返ってきたら、アドバイスは2つに分かれます。
ご相談者が、男性(会社員)の場合は、
「元奥様からの年金分割の請求がないことを願いましょう」
女性の場合は、
「元ご主人に、年金分割の請求はできそうですか?」
と確認します。
男女でアドバイスが異なるには理由があるのですが、その前に、離婚にまつわるお金の話からお伝えします。
離婚を巡るお金で有名なのが、「財産分与」「慰謝料」「養育費」ですが、実は、この3つのお金に加えて、「離婚時の年金分割」があります。
▼意外と知られていない離婚時の年金分割
仮に離婚時に分割された厚生年金の「平均額」を65歳から85歳まで20年受け取るとしたら、その総額は768万円!(下記の年金分割(2)に出てくる「合意分割」月額3.2万円×12カ月×20年の合計額。婚姻期間10~15年が主)。
おまけにこの分割された年金は一生のことなので、離婚時の年金分割は老後にも関わる大事なお金なのです。
離婚時の年金分割とは、「夫婦で支えあったからこそ、仕事をして、厚生年金保険料を納めることができた」という考えのもと、離婚する際には、結婚している間の厚生年金記録を当事者間で分けることができる制度です。
例を挙げると、夫が会社員、妻が専業主婦の場合、「夫が会社員として働けたのは、妻が家庭を守り、夫を支えてきたからでしょう」という考えから、結婚していた間の夫の厚生年金の半分を元夫ではなく、元妻が受け取ることができる制度なのです。
注意点は、分割の対象となるのはあくまでも「厚生年金(共済年金)」ということと、離婚時の年金分割には2種類あるということです。
【年金分割パターン(1) 3号分割】
第3号被保険者期間の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する。
→(例)夫が会社員、妻が専業主婦の夫婦が離婚した場合で考えてみましょう。
妻が第3号被保険者(夫の扶養)となっている間に、夫が納めた厚生年金保険料に対する厚生年金が年10万円だとすると、この半分の5万円が、妻が将来受取可能な金額となります(夫の年金は5万円分減ります)。離婚後、仮にずっと独身で定年まで仕事をして厚生年金保険料を払ったとして、その厚生年金額が年30 万円ならば、元妻が将来もらえる厚生年金額の合計は5万円+30万円で35万円になります。つまり、元妻が自分の年金を受け取る際には、離婚時の3号分割で受け取った5万円も、自分の年金として一生受け取ることができるのです。
<平均データ>
・申請件数:769件
・最も申請が多い年代:30代
・最も申請が多い婚姻期間:2~3年
・離婚による年金額の変動(増減):月額約2000円(年間約2万6000円)
※出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
続いて、「年金分割パターン(2) 合意分割」を見ていこう。