仕事とはいえ、怒鳴られるのはツライもの。クレーム対応の達人が神経をすり減らした経験から得た、自分の心の守り方と、客の怒りを鎮める法を伝授。

Q. いつも苦情がこじれるのは何がマズいのか?

クレーム・コンサルタント 谷 厚志さんの回答

A. カンカンに怒ってクレームをつけてきたお客様でさえ、最後には満面の笑みにしてしまう。そんな魔法のような方法をお教えしましょう。

実はクレームをこじらせているのは、クレームをまるで生ゴミか何かのように「処理」しようとする企業側のほう。よく企業や官公庁にお邪魔すると、過去の記録を集めたファイルの表紙に「クレーム処理票」などと大きく書いてありますが、クレームは「対応」するものです。きちんと対応すれば業務改善のための貴重なヒントが得られるだけでなく、お客様をリピーターにすることもできます。そのためのポイントは、(1)お詫び(2)共感(3)感謝の3点。順番に説明しましょう。

まずクレームを受けたら、何はともあれ「お詫び」をする必要があります。実はクレーム全体のうち20%は、お客様の思い込みや勘違いが原因です。でも仮にそうだったとしても、なるべく早い段階でお詫びをしないと、事態はどんどんこじれていく。それを「お客様、ここにちゃんと書いてありますよ」などとピシャッとはねつけてしまうと、「こんな小さい字が読めるか! それより客に向かってその態度は何だ」ということになる。

最近は「事実を確認する前にうかつに謝ると言質をとられるので、簡単に謝罪してはいけない」という理由から、お詫びが遅れることが多いようです。だから事態が余計に悪化してしまう。でも言質をとられるのはまずい。それなら、限定的な謝罪をすればいいのです。たとえばホテルの宿泊客から「部屋が汚れていた」というクレームがきたら、「せっかくご利用いただきましたのに、お部屋にご満足いただけなかったようで申し訳ございません」と謝る。本当に部屋が汚かったかどうかはさておき、お客様が部屋に満足しなかったのは事実なのですから。