「メキシコとの国境に万里の長城をつくる」。そんな不動産王の人気に、米国政治が戸惑っている。急進の影にあるのは、有権者の「怒り」だ──。
「アウトサイダー」に中高年の白人が期待
2月23日夜、ラスベガスのカジノ兼リゾートホテル「トレジャー・アイランド」では中高年の白人有権者が長蛇の列をつくっていた。アメリカ大統領選挙のネバダ州共和党党員集会で圧勝したドナルド・トランプ氏(69歳)の勝利集会に参加するためだ。
「腰痛持ちだから」と言ってスロットマシーンの椅子に腰かけて入場の順番を待っていたラスベガス出身のアデル・プールさんは「彼なら、政治家が解決できない問題を解決できる」と話す。
「みんな、彼に首ったけ。知的でパワフルで、有能なビジネスマン。政治家はウソばかりで、もううんざりよ」
列に並んでいたラスベガス近郊に住む教師のイボンヌ・ジャイルズさんも、党員集会でトランプ氏に一票を投じた。
「外交政策や移民問題に通じ、『イスラム国』もコントロールしてくれる。『米国を再び偉大な国』にできるのは彼だけ。クリントンにも勝てる」と「トランプ大統領」の誕生に期待する。
この日、トランプ候補は、2位のマルコ・ルビオ候補(44歳)に20ポイント以上の差をつけ、45.9%という得票率で圧勝した。さらに3月1日の「スーパーチューズデー」でも11州中7州を制覇。泡沫候補として消えていく「はず」だった同氏が一大旋風を巻き起こし、快進撃を続けている。
こうした「トランプ旋風」とは、いわばトランプ氏を「アウトサイダー的世直しヒーロー」とみなす動きだ。
トランプ候補は既成の政治家を激しく批判する。いわくワシントンの政治家は、ウォール街からの政治献金で操られている。民衆のための政治ができるのは、大金持ちの自分だけだ――。