健康に悪いことにも、お金を使ったほうがいい

ただ、常にお金に困っているのに、13万円もの家賃を払い続けるのは贅沢だ、と考える人は多いでしょう。実際、身内からも指摘されたことがありました。私も贅沢なのはわかっているのですが、日の光が降り注ぐリビングで寛ぐ妻を見ていると、余命宣告されることなく妻が生きているのは、このマンションに住んでいるから、と思えてくるのです。

実際、リビングで寛ぐ妻が、幸せそうな表情を浮かべて「こんな快適なマンションに住ませてくれてありがとう」といってくれることがよくあります。そのたびに、このマンションに引っ越ししたから、乳がんの宣告から5年近く経ったいまでも、妻が生きていられるんだ、と思えるのです。医者から「最悪の顔つき」といわれたがんと、ここまで闘えているんだ、と思えてならないのです。無駄遣いと思う人も多いでしょうが、この無駄遣いのために妻の余命は延びている、と信じて疑わないくらいです。

西洋医学による医療と代替医療を合わせ、患者を治療する統合医学の権威、帯津良一先生が「健康オタクでは、免疫力が落ちてしまう。少々の不摂生をしても、ときめくことで免疫力や自然治癒力は高まる」といったようなことをいっていたことに注目し、少々不健康と思われることでも、たまには妻が楽しくなることには、お金を使うようにしています。

たとえば、妻は発泡酒を飲むのが好き(お金があればビールを飲みたいのですが……)なのですが、飲みたいときは1日1本、多くて2本までなら、飲んでもいいことにしています。妻の肝臓ががんに侵されていることを考えると、健康によくないように思えますが、主治医にアルコールを止められているわけではないため、あまり深く考えないようにしています。実際、妻はほぼ毎日、発泡酒を飲んでいます。

洋菓子も妻の好物ですが、週に1度は食べているかと思います。がん患者で洋菓子を断つ人はめずらしくはありませんが、うれしそうに食べる妻を見ていると、ときめいて免疫力や自然治癒力が高まっているように思えます。洋菓子のほかにも、ショッピングモールに行ったとき、妻の好きなケンタッキーフライドチキンを昼食に摂ることがあります。そんな脂っこいもの、と思う人は少なくないでしょうが、満足そうに食べる妻の顔を見ていると、たまになら食べたほうがいい、とさえ思えます。

楽しみにしていた外出の日に、少しくらい体調が悪くても、楽しみの度合いが強いのなら、外出を勧めることもあります。外出したがために体調が悪くなることもあるのですが、それでも妻が楽しかったのなら、その選択に間違いはなかった、と思っています。