意図的なら危険沖縄の裁判官人事

多見谷氏は、平成22年4月から同26年3月まで千葉地裁の裁判長を務め、行政(およびそれに準ずる組織)が当事者となった裁判を数多く手がけているが、新聞で報じられた判決を見る限り、9割がた行政を勝たせている。その中には、国営の成田国際空港会社が反対派農民の土地明け渡しを求めた国策色の強い裁判もある。

過去、国策裁判で意図的な裁判官人事が行われたと見られる例がいくつかある。昭和45年に新潟地裁で始まり、自衛隊の合憲性が争われた小西空曹事件では、東京地裁から藤野英一裁判官が送り込まれた。札幌地裁が1審判決(昭和48年)で自衛隊を違憲と断じた長沼ナイキ訴訟では、控訴審の裁判長として小河80次横浜地裁部総括判事が札幌高裁に送り込まれ、悪名高い「長沼シフト」が敷かれた。伊方原発訴訟(松山地裁)では昭和52年の結審直前に、訴訟を担当していた合議体の村上悦雄裁判長と左陪席の岡部信也裁判官が2人揃って突然異動になった。もちろんこれら裁判では、国、検察、電力会社の「国策側」が勝っている。

安倍政権下では、安全保障関連法案を成立させるために、内閣法制局長官に集団的自衛権推進派の小松一郎氏を強引に持ってくる人事が行われた。

今回の人事が意図的なものとは断定できない。また法技術性が高い行政訴訟の経験がある裁判官を選ぼうとすれば選択肢は多くなかったかもしれない。多見谷裁判長には疑念を持たれないような訴訟指揮と判決を期待する。

(時事通信フォト=写真)
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