小刻み解散で勢力維持できるか
衆参ダブル選挙を視野に入れる2つ目の理由は、野党の分断・壊滅だ。民主党や維新の党などが野党再編を進めるには政策や選挙区の調整が欠かせない。その調整は次回選挙までの時間があれば比較的まとまりやすいが、短期間で選挙を迎えれば単なる「野合」との批判を受ける。
維新の党は分裂したが、一定の支持基盤を持つ共産党が調整に乗り出しており、野党陣営の態勢が整う前に「伝家の宝刀」を抜いたほうが得策との判断が働いている。仮にダブル選挙で勝利できれば、野党第一党の民主党の議席がさらに減ることにより政権交代の芽が摘めるとの計算だ。
3つ目の理由は、アベノミクスとの関係にある。大胆な金融緩和や機動的な財政政策が奏功し、円安・株高を誘引して企業収益改善や賃上げにつなげてきたが、17年4月には消費税10%導入が待ち構えている。来年は再増税前の駆け込み需要が見込めるものの、「10%後」はその反動減などによる景気悪化が想定される。総裁任期満了の18年9月まで景気が悪ければ、衆院解散・総選挙を打つ余力はなくなるわけだ。
首相周辺が描く「カレンダー」には、解散権行使のタイミングは来年夏と18年夏しかない。昨年末の解散総選挙から約1年半となる来年夏、さらに約2年後の18年夏と、小刻みに解散して権力を維持することができるのか。首相の賭けが始まる。
(時事通信フォト=写真)