日本人の死亡原因でもっとも多いのが「ガン」。その中でもっとも死亡者の多いガンが「肺ガン」である。一度この肺ガンの「手術」を取りあげた(>>前回はこちら)。肺ガンの中心となる治療法にはそれ以外に「化学療法(抗ガン剤)」「放射線療法」がある。今回は進歩の著しい放射線療法を取りあげよう。

肺ガンの放射線療法では「定位放射線治療」が手術並みの治療成績とあって人気になっている。

定位放射線治療は放射線を正確にガン病巣に集中照射する方法。多方向から大線量をガン病巣に集中させ、すべての放射線の重なるところだけを破壊する。そのため、ピンポイント照射といわれている。また、コンピュータで行った三次元の治療計画通りに照射されているかどうかについては、CTで確認できるので、周辺への照射は1ミリ単位となっている。

加えて、大線量のため照射は4回、もしくは10回で終了。通常照射の30回と比べると通院しやすい。

実際、定位放射線治療と手術の5年生存率比較が発表されている。山梨大放射線科の大西洋准教授らのグループが行った研究報告で発表は2007年である。

対象となった定位放射線治療を受けた患者は、すべて手術選択が可能だった。内訳は病期がIA期の患者65人、病期がIB期の患者22人。5年生存率はIA期が76%、IB期が64%。これに対して手術の5年生存率はIA期が約80%、IB期が約66%といわれているので、定位放射線治療と手術とでは成績の差はほとんどない、といえる。

いかに差がないかは、呼吸器外科医で肺ガンの手術を専門とする医師が“驚くべき治療成績”と口にすることでも理解できよう。それで、ガンの直径が5センチ以下の早期肺ガンでは、放射線療法がクローズアップされることになったのである。

このような治療実績をあげてきた放射線療法の目的は大きく2つある。ひとつは前述したように手術と同じく「根治療法」で、もうひとつが「緩和療法」である。

根治療法は完全に治そうとする治療。IA、IB期で高い効果をあげており、進行ガンのIIA、IIB期でも体力等で手術選択が適切でない患者に単独で行われている。もちろん、手術との併用療法もあるし、化学療法と併用する「放射線化学療法」もある。

一方、緩和療法はガンを完全に治すのを目的とするのではなく、ガンに伴って起こる痛みなどを解消したり、減らすために行われる放射線療法である。

こうして広く用いられ、成績をあげてきた放射線療法に、より高い効果が期待される粒子線(陽子線、重粒子線)治療も加わり、新しい歩みを見せている。

【生活習慣のワンポイント】

WHO(世界保健機関)の付属機関の「国際がん研究機関」は喫煙でのもっともリスクの高いガンとして肺ガンをあげている。喫煙によるリスクは非喫煙者の15~30倍。このリスクに幅があるのは吸う本数などで大きく変化するからである。

今日、リスクを計算するには「喫煙指数(ブリンクマン指数)」が使われている。「1日の喫煙本数」×「喫煙年数」で計算。1日40本を20年吸ってきた人の喫煙指数は800となる。そして喫煙指数でリスクは大きく異なる。

▼400以上……肺ガンに対して要注意。
 ▼600以上……肺ガンリスクが高いので検診をしっかり受けよう!
 ▼800以上……肺ガンリスクは極めて高い。検診は当然。

たばこの害に気付いて禁煙すると「ご褒美」がある。禁煙後10年で肺ガンリスクは50~70%減少し、禁煙20年で非喫煙者と同程度となる。できれば40歳までに禁煙を成功させよう。