米国次期大統領首席補佐官 ラム・エマニュエル
1959年、シカゴ生まれのユダヤ系米国人。ノースウエスタン大学大学院修了。クリントン前大統領の選挙スタッフ、大統領政策顧問を経て、2002年にイリノイ州から下院議員に当選。民主党下院議員会長。


 

「エマニュエル氏よりも仕事ができる人物はほかにいない」。オバマ次期米大統領が、ラム・エマニュエル下院議員(49)を次期大統領首席補佐官に任命した際の弁である。

日本では「大統領首席補佐官」と訳されるが、正式には「Assistant to the President and White House Chief of Staff」で、米国では一般に「White House Chief of Staff」と呼ばれる。その名の通りホワイトハウス・スタッフの統括者である。「大統領の分身」とも言われ、誰と会うかを含む大統領のスケジュール管理から政策立案、議会との折衝までこなす。

エマニュエル氏は、将来は下院議長と目される若手のホープ。政策通でも知られるが、ワシントンの権力構造と裏の政治に通じていることをオバマ氏に買われたようだ。議会に幅広い人脈を持ち、議案採決の根回しなどにおいて“凄腕”として知られる。闘争心が強く負けず嫌いで、ついたあだ名がアクション映画の主人公「ランボー」。しばしば口汚い発言をすることでも有名で、仲違いした友人に死んだ魚を送りつけたなどの“伝説”を持つ。

共和党は「オバマ氏が掲げた対話路線と異なる」と批判したが、「今は結束の時。両党共通の目的のため全力を尽くしたい」と“汚れ役”を快諾した。
エマニュエル氏はイスラエルからの移民の息子で、結婚前に妻をユダヤ教に改宗させ、イスラエルの国籍も持つ。父親はかつてシオニストの武装グループ「イルグン」に加わっていたという。

イデオロギー的にはネオコンとは全く違う民主党リベラルだが、1991年の湾岸戦争ではボランティアとしてイスラエル軍で働いたほどの親イスラエル派。停滞している中東和平の進展を期待する向きもあるが、米国内のアラブ系団体からは懸念の声も出ている。

(写真=AP Images)