次期米国務長官ヒラリー・クリントン
1947年、イリノイ州生まれ。イェール大学ロースクール在学中に後の米大統領ビル・クリントンと出会い75年に結婚。93年から2001年までファーストレディー。00年より上院議員。娘が1人。


 

激しい予備選を戦ったオバマ次期米大統領から国務長官に指名された。オバマ氏は、ライバルを重要閣僚に抜擢し、南北戦争という未曾有の国難を乗り切ったリンカーンの故事「チーム・オブ・ライバル」に倣ったといわれるが、受けるほうの度量も問われる。

国務長官は大統領継承順位4番目にあたり、各国の外相などよりははるかに権限があるとされるが一閣僚であることに変わりはない。今なお大統領の座をあきらめていないとされるクリントン議員だが、国務長官から大統領になった例は19世紀半ばのブキャナン第15代大統領が最後である。

しかもニューヨーク州選出の上院議員の座を蹴っての受諾である。同州は民主党の牙城であり、望めば生涯上院議員を続けることも可能で、将来は議会の有力指導者となる道もあった。とはいえ米議会は当選回数がものをいう。まだ2期目のクリントン議員が外交委員会などの委員長となり活躍できるのはまだまだ先のこと。それを待つよりは世界的知名度を生かし、3人目となる女性国務長官の道を選んだ。

もちろん簡単に受諾したわけではない。報道によれば、国務省人事権の一任と、国家安全保障担当補佐官(ジェームズ・ジョーンズNATO欧州連合軍元最高司令官が指名された)を通さずに大統領に直言できる権限を要求、オバマ氏は両方を約束したとされる。

クリントン議員はイラク戦争はじめ外交問題ではオバマ氏より明らかに右寄りでタカ派に近く、親イスラエル派としても有名だ。閣内対立が懸念されるが、12月1日の会見では「私のすべてをあなたの政権と、この国にささげる」と決意表明。3日発表のCNNの世論調査では57%が「意見が違ってもクリントン氏はオバマ氏に従う」と回答している。

(写真=AP Images)