「0時間」の子は、「2時間未満」の子より成績が悪いわけ

そのとき、注目をもってメディア各紙に報道されたのが、文科省が行った「生活習慣とのクロス分析」の結果でした。

子どもたちのテレビの視聴時間やインターネットの利用時間(スマートフォンの利用を含む)と、成績との間に、明確な相関関係 *7があったのです。たとえば中3の科目別問題正答率を平日インターネット利用時間別で見れば、グラフのような感じです。

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平日インターネット利用時間別 科目別問題正答率(中3)

珍しい「へ」の字型の相関です。

いずれの科目でも、成績が最もよかったのは、インターネット利用時間(平日)が、1時間未満の子どもたちでした。利用時間が長くなるにつれて成績は下がり、4時間以上になると9点から17点もの差がつきました。

一方、利用時間がゼロの子どもたちの成績は意外にも低く、利用時間が1~2時間の子どもたちと同程度で、1時間未満の子どもたちよりは、3~4点劣っていました(編集部注:2時間未満の子どもたちよりも、若干劣った)。

▼メディアや専門家たちの解釈は? そして三女が放ったひと言

この結果に対し、さまざまな立場の人たちがいろいろな解釈をしていました。

・文科省:「視聴時間を決めるなど、節度を守って見れば知識の習得に役立つ」
・ネット依存の専門家:「子どもたちが無目的にだらだらとネットを続けることのないよう、家庭や学校で時間を制限する指導が必要だ」

前者には疑問があります。「インターネットやテレビからの知識」が、国語や、特に算数・数学の問題を解くのになんの役に立つのでしょうか? それに1時間未満「見る」のと、まったく「見ない」ことで、なぜこんなに差がつくのでしょうか? さらに言えば、なぜそれなら利用が1時間台の子は、もっと成績がよくならないのでしょうか? 「知識の習得に役立つ」というのであれば。

後者はまったくその通りでしょう。使いすぎがダメであることは、明らかです。でも「制限」ってなんなんでしょう? そして、完全に制限(ゼロ)してしまうと、なぜ成績が悪いのでしょうか。

食卓で新聞を読みながら「フシギだねえ」とつぶやいた私に、通りかかった当時高1の三女があっさり言い放ちました。

「意志が強いからだよ」

確かに、インターネットを使うけれど、1日平均で1時間未満に抑えられるということは、本人の意志力の賜です。そして、意志の強い子どもは勉強にも打ち込める。

しかし、利用時間ゼロの子の成績が悪かったのは?

これは憶測ですが、利用ゼロはきっと本人の意志ではないのでしょう。親の強制です。もちろん逆かもしれません。成績が悪いのでネット利用を禁止している、のかも。

ともかく、私には文科省担当者やネット依存専門家のコメントより、100倍説得力ある「解釈」でした。さすが、当事者(笑)。


*7 2014年度調査でも同様の結果であったが、調査項目が変わったため同じ比較ができない。