【前編のまとめ】

いわば、スマートフォン・ネイティブ世代の今の小・中・高校生。前編では、親の命令などでスマホ・ネット接触時間(LINEや動画視聴・オンラインゲームなど)がゼロの子は、接触している子より学力が低いという意外な事実をデータをもとに解説。重要なのは、親がガミガミうるさく言うのではなく、子ども自身がメディア接触時間を自制する意志を持ち、勉強にも向き合えるかどうかなのだ。

後編は、3人の娘を育てている著者の三谷氏(BCG、アクセンチュア勤務後、現在は大学教授)が、「スマホの利用時間を多すぎると将来どうなってしまうのか」と心配する親たちが注目すべきデータを紐解いていく。


布団のなかでもスマホを握りしめている子どもたち

スマートフォンに関しての、ある中学校での調査結果を見てみましょう。

ここからは前編に続き、東京都内のA中学校で2013年10月に実施された全校生徒アンケートの結果から、「子どもたち(と親・教員)が理解しておくべきこと」「親・教員がやりうること」を考えます。

▼スマートフォンがケータイ利用時間を倍加する

A中学校の場合、平日のケータイ利用時間は全校平均で、

・ガラケー派:1.5h/スマホ派:3.2h

となりました。なにかをしながらの利用も多いでしょうが、「なし」「ガラケー」「スマホ」の各派で大差がつきました。自宅にあるパソコン(以下PC)の利用時間も合わせると、ネット利用時間は、

・なし派:1.3h(うちPC利用時間1.3h)/ガラケー派:2.8h(同1.3h)/スマホ派:3.6h(同0.4h)

となり、なし派とスマホ派では2.3hもの差があり、スマホ派はガラケー派の3割増しとなっています。また、PC利用時間を見ると、スマホ派はPCをあまり使わず、ほとんどをスマホで済ませていることがわかります。

意外なことにこの傾向には、男女差や学年差はあまりありません。

▼男女ともケータイはメールやLINE、男子はゲームと動画、女子はTwitterにも使う

ケータイやPCの用途を尋ねたところ、PCは男女ともに「調べ物」と「ゲーム」で同じでした。しかし、ケータイの使い方は、男女で大きく異なります。スマホ派で見れば、ともに「メール」「通話」「ライン」は75~95%の利用率ですが、

・男子:ゲーム利用が88%、Twitterはほとんど使わない(スマホ派でも18%)
・女子:スマホ派ではTwitterも38%が使う

女子は特にコミュニケーションツールとして、男子はゲーム機(と恐らくは動画視聴機)として使っていることがわかります。

これらの結果として明らかに起こっているのは、就寝時刻が遅くなること、と、睡眠時間が短くなることです。平日の就寝時刻は1~3年生で大きな差がありますが、平均すると、

・なし派:23時6分/ガラケー派:23時24分/スマホ派:23時36分

となります。ケータイの有無で20~30分、違うわけです。

ここでガラケー派とスマホ派で大差がないのは女子の影響です。女子の場合、就寝時刻はガラケー派とスマホ派ともに23時36分でまったく変わりません。互いのコミュニケーションのツールなので、ガラケーでもスマホでも、夜、寝る時間は同じになる訳です。ケータイを布団のなかでも握りしめている女子生徒たちの姿が目に浮かびます。