ぼんやりしていると下流に転落する
一億総中流といわれた日本で、格差が拡大し続けている。
グローバル化が進み、就活でライバルとなるのは日本人だけではなくなった。さらに、大半の仕事がロボットにとってかわり、少ないパイを奪い合うようになったら、“大卒程度”の学力では生き残れなくなる可能性も否定できない。
特別、上昇志向が強いわけではなく、ただ「わが子が一生、食べていけるようにしてやりたい」と考えるだけでも、少なくともそこそこ名の通った大学で「中の上」に入るくらいの学力は必要だと感じる親も多いのではないか。
ぼんやりしていたら、いつでも機械やロボットに役割を奪われてしまう「下流労働者」に転落するリスクを負うのが、今の子ども世代。中流に留まっているのもひと苦労だ。
「中の下」は避けてほしい。親は子にそんな気持ちを持ちつつ、一方では、野心も抱く。それは、「子どもには、世界標準の存在になってほしい」だ。
世界の大学ランキングで、東大は12位(2015年英タイムズ・ハイアー・エデュケーション)。だから、経済的に余裕がある家庭の優秀な子供は最近、ハーバード大学やイエール大学など、海外の大学を目指すことも珍しくない。それが世界中の有能な就活生などのライバルに対し、頭1つ、2つ抜ける方法だからだろう。
しかし、一般的なサラリーマン家庭で留学費用を捻出するのは難しいかもしれない。庶民は指をくわえて見ているしかないのだろうか。
▼国語と算数は「早回し」して学ばせる
そんな親の悩みに、元外交官で作家の佐藤優さんが応えてくれた。日本の学校教育の枠組みの中でも、子どもに、少なくとも「中の上」、あわよくば「頭抜けた力」をつけさせる学習方法を教えていただいた。
佐藤さんは、外務省時代、ロシア(当時ソ連)に独自の人脈を築き、1991年に起きたクーデター未遂事件では、他国に先駆けてゴルバチョフ大統領の生存情報を日本政府にもたらした、本物のインテリジェンスの持ち主。ノンキャリアとしては異例の「国際情報局主任分析官」に抜擢され、その後は作家に転身。ベストセラーを連発しているのはご存じの通りだ。
その佐藤さんが薦めるのが、小学生のうちに国語と算数を早回しして教えること。学校の授業進度にあわせて学んでいては、企業のビジネスマンで何であれ、高いレベルの人材を育てるのに「間に合わなくなる」からだ。
「人が一目を置くような教養を身に付けるには、時間がかかります。そのため新聞が読めるくらいになったら、難しい本にどんどんチャレンジさせたほうがいい。早い子なら小学校高学年で、大人と同レベルの読解力がついています。語彙力や論理的思考力は不足していても、読書を通じて鍛えていけます」
少しハードルの高いと思える本でも、積極的に子どもに与えて、とにかく読む習慣をつけさせることが大事だ。