わが子の成績不振を、転塾でごかますな

秋になると感じる。カレンダーの薄さだ。

今年ももう終わりに近づいている! という「1年のアッという間感」は大人になった証拠であろう。子どもにとってはクリスマス、ましてやお正月なんて先も先の話であるのに、大人の時間感覚は残酷だ。

このような親子感覚のズレが生じるこの季節、とりわけ受験生の親は気が気でなくなるのが普通だ。

「入試本番まで時間がないのに、何やってんだ、コイツ!」

と我が子を絶望的な眼差しで見つめてしまいがちになる。そこで受験生の親の中にはこういう発想になる人が登場する。

「まずい! この塾では受からない!」

己の子どもの出来の悪さを直視し過ぎて、その原因を塾のせいにしてしまう層が一定の割合で出現するのだ。

「A塾では成績が上がらないのでB塾にした方がいいですよね?」
「塾は週5日ありますが、残りの2日は個別に通わないと受かりませんよね?」

この時期、私にもこうした相談が増える。家庭教師に対して不信感を持ち始める親も出る。

「あまりにもノンビリなので、やはり焦ってしまいます。家での勉強だけだから、受験生と接する機会がないので、ダラダラ甘い勉強になっているように思うのです。やはり競争相手が周りにいないとダメなのか? この調子なら塾に行かせ一問でも解かせて、わからない所をいつでも聞ける状態が良いのか? そこまで見ては貰えないのか? と悶々としております。りんこさん、助けてください!」

毎年、同じようなお悩みが集中するので、きっとそういう季節なんだとそう思う。

私の返事はいつも同じだ。「多神教は失敗する」

AがダメならB、BがダメならCと塾を渡り歩く人がいるが、それを私は「塾放浪者」と呼んでいるが、往々にして結果は良くない。

つまり多神教にして、こっちもあっちもと揺れ動くと全落ち(受験校すべてから不合格をもらうこと)の可能性すら出てくるのだ。

この塾ではこういうやり方、この先生はこういうやり方っていう具合にうまく合わせないといけないのだが、それは大人でもすごく難しいことなので子どもに強いるのは酷なのだ。

星占いでめざましテレビが12位だったから、じゃあ、他の局を見る! って右往左往しているのと同じことだ。こっちではラッキーアイテムが鍋焼きうどんだったけど、こっちではトマトのパスタだった! みたいなことが起こるので、炭水化物だらけになって、残るのは睡魔だけだったりする。

つまりバタバタしないということが核になる。

その塾、あるいはその先生を信じたからにはお任せしないといけないものだし、それで十分、大丈夫だ。

これでまた違う塾に行って、負荷をかけたらパニック請け合い。人に慣れるにも、カリキュラムに慣れるのも時間がかかる。不出来な子なら、なおさらそうだ。