スマホ漬けの子どもは「他者との交渉」能力つかず?

▼幼児にスマホやタブレット、の功罪。社会からの隔絶……

最近「わが子が1歳でスマートフォンを使いこなしている!」という喜びの投稿を、Facebookなどでよく見かけます。

道端でも電車の中でも、1~3歳の幼児がスマートフォン(やタブレット)をいじっているのをよく見かけます。お父さんのおひざやお母さんが押すベビーカーの上で!

お父さんやお母さんは、もちろん自分のスマートフォンに集中しています。FacebookかLINEかゲームに夢中です。そして子どもたちも、親も周りも関係なく、小さな画面に見入っています。きっとYouTubeのオモシロ動画でしょう。もしくは、あのちっちゃな人差し指で、画面をタッチやフリックしまくっているのは、何かの知育ゲームなのでしょう。子どもがおとなしくしているので、親も周りもハッピーです。

本当にそれで、いいのでしょうか? 児童発達の観点からは、強い懸念が示されています *10

テレビやゲームの長時間視聴が、幼児(生後30カ月未満)の能力発達に悪影響を与えることは、多くの研究が示しています。

子どもたちはその共感や問題解決能力を、仲間たちとのコミュニケーション(ケンカを含む)やじゃれ合い(unstructured play)から学びます。子どもたちはその協調運動能力 *11を、積み木や鬼ごっこのようなリアルな遊びによって発達させていきます。

それらが「魅力的でシンプルで楽しい」モバイル・アプリによって、失われてしまうかもしれません。

そして何より、子どもたちはその社会性を育てる機会を失います。自制心(self-control)や社会的自己制御能力(social self-regulation)を養い、他人と交渉をする機会を持たず育っていくことになります。ヒトや世の中は、アプリなんかよりもっともっと複雑で苦しくて魅力的で相対的なものなので。

実は、親はただ、子どもを静かにさせたいだけかもしれません。昔は「ディズニーアニメ」や「あめ玉」がその役目でした。しかし、より強力なこれらモバイル・アプリは子どもたち(3歳以下)を周りから切り離し、社会から遠ざけることになるのです。

▼自制心はどう生まれるのか? それは「信頼」と「理性」の結果である

2012年、ロチェスター大学の認知脳科学者のセレステ・キッド(Celeste Kidd)は改良型のマシュマロ実験を行いました。そして「子どもたちは、約束への信頼と理性(計算)で食べなかったのだ」と結論づけました。

彼女は子どもたちを2群に分けました。

「約束守られた群(reliable)」と「約束裏切られた群(unreliable)」です。各々、マシュマロ実験の直前に、ある約束が守られた、もしくは破られた経験をしています。

その結果、「約束裏切られた群」が平均3分しかガマンできなかったのに比べ、「約束守られた群」は4倍の平均12分もガマンできました。

つまり、ガマンできるかできないかを分けていたのは、約束相手が「信頼」できるかどうか、ガマンしたとき報酬が本当に得られるのかを計算できる「理性」の強弱だったというわけです。

そして、もともとのマシュマロ実験の追跡調査の結果は、「(周りとの)約束が信頼できる環境に育った子どもは、有能で学力の高い子に育つ」ということだったのだろうとキッドたちは解釈しました。

きっと、ミシェルもキッドも、いずれも正しいのでしょう。「自制心」にせよ「約束へ信頼」にせよ、どちらにせよ「将来どうなるかの判断」を含むからです。

子どもたちに、インターネットやテレビをただ禁止しても、「自制心」も「約束への信頼」も生まれません。「への字」カーブがそれを示しています。ある程度は自分で判断させなくてはならないのです。

でも、判断のためには、情報が必要です。「インターネットやテレビに時間を費やしすぎると(将来)どうなるのか」という。

そういった情報が、残念ながら未だ豊富にあるわけではありませんが、後編では、スマートフォンに関しての、ある中学校での調査結果をみてみましょう。(以下、後編へ)


*10 The guardian記事「Tablets and smartphones may affect social and emotional development, scientists speculate」参照。
*11 視覚・聴覚・触覚などと筋肉などが協調して動くこと。これがないとボールを蹴ることも字を書くことも困難になる。
 

[参考資料]
『全国学力・学習状況調査 報告書 クロス集計』文部科学省(2013年度)
『Stanford marshmallow experiment』Wikipedia
『Children are more trusting than you think, proves ‘marshmallow test' as under-fives are asked to wait for treats』MailOnline
「Tablets and smartphones may affect social and emotional development, scientists speculate」the guardian(2015.2.2)
子どもの発想力・自立心の鍛え方(2) 「ヒマ」をつくる~携帯電話やテレビをどう制限するか(DOL、2014.11.27)
今を生きるためのスマホ節食6ヵ条~プチネット断食のススメ[6] (DOL、2013.10.3)
『親と子の「伝える技術」』(実務教育出版)
『一瞬で大切なことを決める技術』(中経の文庫)
『お手伝い至上主義でいこう!』(プレジデント社)

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