ここ3年で物件数は10倍に急増!
賃貸住宅の魅力は、敷金・礼金程度の初期費用で住み替えられる点だ。嫌になったなら、いつでも退去できる気軽さもある。ただ、高齢者は火災や孤独死などを懸念され、入居を拒まれる例も少なくない。
その対策として、2005年12月から導入されたのが、「高齢者専用賃貸住宅」(高専賃)だ。高齢を理由に入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」(高円賃)のうち、高齢者のみを対象にした賃貸住宅を指す。おおむね60歳以上のシニアを対象とし、物件によっては緊急時対応サービスや食事なども提供される。
住まいの不便さや、一人暮らしの不安を抱えるシニアの住み替え先として、この高専賃を選択肢に入れる人が増えつつある。
ある住宅メーカーは今秋、比較的元気なシニアを対象に生活サポート付きの高専賃を開発した。1LDK中心のバリアフリー仕様の住戸には、一人暮らしや高齢夫婦世帯が暮らす。
玄関先にはフロントがあり、日中は専属のスタッフが出迎える。来訪者の受け付けや宅配便の取り次ぎのほか、体調不良時の対応も行う。居室にある緊急コールボタンを押すとスタッフが駆け付け、必要に応じて救急車の手配もする。
また、居室内で一定時間動く気配がないと、自動的にフロントや警備会社に連絡がいくシステムも備えられている。希望者には食事の提供も可能だ。
普段は自由に暮らしながら、万一、具合が悪くなってもスタッフが駆け付けてくれる安心感を求めて入居する例が多いという。
高専賃は、貸し主が都道府県に物件の設備や家賃、付帯サービスの有無などの情報を登録すると、それら情報が自治体の窓口や高齢者住宅財団のホームページで開示されるしくみになっている。その数は全国に約1000カ所(08年11月現在)。制度開始直後の06年3月には98カ所だったが、約3年で10倍に増えた。
急増の背景には、少子高齢化の影響がある。若者向けのワンルームマンションの需要が細り、貸し手もシニア向けに転換しつつあるのだ。
さらに、介護付き有料老人ホーム(特定施設)の開設を自治体が規制しているため、その代わりに食堂や介護事業所を併設した高専賃を手がける事業者も増えてきている。
国交省も、来年度予算で高齢者向け賃貸住宅の拡充策を盛り込んでおり、今後も数は増える見込みだ。