土地活用のための出発点は「まず現状を知る」

古くなったわが家。このままで老後、住み続けられるだろうか。そもそも子どもたちは、この家を相続するつもりがあるだろうか……。

定年後の生活、相続などという言葉がちらつきだしたら、まずは家族、子どもたちと将来の話をしてみること。子どもに相続して住み続けるつもりがあるなら建て替えもいいだろうし、すぐにも同居できるなら二世帯住宅という手もある。しかし、相続後は売却と考えているならバリアフリー化程度のリフォームでよいなどと、とるべき手段が変わってくるからだ。

次に自分の住まいの現在の価値を調べる。相続時はもちろん、仮に売る、貸すという方向性を考える場合にも家、土地にどのくらいの価値があるかは把握しておいたほうがいい。

ここで覚悟しておいてほしいのは、いくらお金をかけて建てた家でも、木造で20年も経てば家の価値はほぼゼロということ。実際にはまだ住めるとしても売る場合にはゼロどころか、解体費用がかかる分、マイナスになることすらあるのだ。特に都市近郊の建売住宅は確実にマイナス。仮に1000万円の土地に建坪50坪で3000万円の家だったとしても、20年後には家の価値はゼロ、解体費に坪3万円かかるとしたら土地代マイナス150万円となり、かつての土地代より少ない850万円しか残らない計算だ。

土地の価格については国土交通省の「土地総合情報システム」での検索がお勧めだ。民間の同種検索システムの情報は都市部に偏りがちだが、このサイトなら全国のデータが見られる。

家、土地の価格に加え、現金その他の金融資産もリストアップ、わが家の総資産を洗い出したところで、老後に必要な資金を考えてみる。ちなみに総務省の「平成15年度家計調査」によると65歳以上夫婦の生活費の平均は月26万円、生命保険文化センターの「平成19年度生活保障に関する調査」ではゆとりある老後生活費の目安は月38.3万円となっている。

これを参考に、月30万円の生活費がかかるとして、これから20年間に必要な金額を計算してみると、結果は7200万円。ここから年金受給額を引いた額を、貯蓄その他で賄わなければいけないということになる。これを先に洗い出したわが家の総資産から引けば、老後の住まいのために使える額が明確になる。

さて、それで何ができるか。ここでは親と子が住む距離、子どもの相続の意向、予算と土地の広さその他の条件から選択肢を一覧にまとめてみた。日常的に通える、あるいは居を移しても子どもの生活に変化が起きない程度の距離を近距離とし、それ以上を遠距離としてある。(次ページにチャートを掲載)