人事部長と若手社員の「大反論」

だが、同じ50代の製薬会社の人事部長は「あまりに身勝手な言い分」と批判する。

「そもそも年功賃金の前提が崩れている。バブル崩壊以降、会社の成長はストップし、業績が低迷する中で外資との厳しい競争にさらされ、年功賃金を維持できなくなったのはだいぶ前の話だ。しかも2000年前後に団塊の世代の先輩が次々とクビを切られて会社を去ったのを間近に見ていたのが当時30代後半の今の50代だ。それ以降、賃金・昇進制度が変わり、実力主義が会社の主流になっている。また年功序列であっても年齢相応の職責を担い、成果を出すことが求められるのが前提。いまだにルール違反だのとノー天気なことを言っているのは、よほど仕事ができない人なのだろう」

▼「20代、30代はかわいそうだ」

この製薬会社は2000年代半ばに年功型から完全成果主義に移行するとともに、合併とともに大量の社員をリストラしている。人事部長は「若者もかわいそうだ」と指摘する。

「年功賃金制度がなくなると、これまで給与を先送りされていた若い世代(20、30代)は40歳を過ぎても給与が上がらなくなりました。彼らからすれば『どうせ上がらないのであれば、いま働いている成果にふさわしい賃金をよこせ』と言うのは自然なこと。もらい過ぎている中高年の賃金を削り、能力や成果に見合った賃金を払うようにすべきだ」

食品加工会社の40代の人事課長は、給与を巡って世代間で対立する時代ではないと指摘する。

「年功序列の時代は高成長のときは年齢とともに給与が上がり、ピークのときに定年を迎える幸せな時代だった。賃金と昇格が右肩上がりになっている山登り型の人事体系だ。でも今は、60歳前の50代半ばに役職定年で給与が下がり、さらに定年後の再雇用でさらに給与が下げるしかないというのが現状。最大の問題は誰もが給与の上昇と出世を目指して山を登るという山登り型の人事管理が通用しなくなっていることだ。全員が偉くなれる時代ではない。会社としても山に登ることをモチベーションにして社員を引っ張ること自体に無理があると思っている」

その結果として問題になっているのが“働かないオジサン”の存在だ。

じつはこのオジサンはいまだに年功序列を引きずっている大手企業に多いらしい。もちろんまったく働いていないわけではない。「給与が高い割に仕事をしない人」を後輩の若手社員がそう見ているのだ。

ではどうやってこの問題を解決するのか。