「給与が高い割に仕事しない人」の生きる道

中堅IT企業の人事部長は簡単だと言い切る。

「最大の問題は成果と給与が見合っていないことだ。働かないのに給料をいっぱいもらっているのは罪だ。これは若手も含めて年齢に関係ないはずだが、大企業はそういう構造を長年放置してきたから問題になっている。うちは成果が出ない人は減給するし、降格もある。年齢ととともに給与が上昇する年功カーブというものがないし、40代、50代でも30代と同じ給与をもらっている人はゴロゴロいる。40代でも20代の給与の人もたくさんいる。こっちもそれでよく子供2人を養い、生活しているなと思うが、本人がそれで満足しているのであれば会社にとっても不都合はない」

しかし、伝統的大企業ほどここまで割り切った制度に転換するのは容易ではない。そこで、各社ではいろんな手段を使って“働く気”にさせようとしている。そのひとつがマインドセットだ。

「同期入社に集合をかける」のはそのひとつ。ある金融業では45歳の同期を集めた研修を実施している。人事課長はこう語る。

「同期が全員集まるので、自分の位置を再認識する機会にもなる。同期には部長もいれば課長、平社員もいる。月に100万円の給与をもらっている人もいれば、40万円しかもらっていない人もいる。『あいつはすごいよな、俺は今まで何をやってきたいだろうと』と如実に彼我の差を感じることになる。まだ出世できるかもしれないと思っていた人が『あいつが部長なら、俺は絶対に無理だよな』と思うかもしれない。でも逆に、刺激を受けて、さらにがんばって働こうという気持ちになるかもしれない」

もちろん諦めて退職する意思があれば、早期退職募集制度を使って転進する道もある。

▼働かないオジサン、窮余の策

しかし、50代にとってはまだまだ職業人生は長い。子どもの教育費や老後の生活を考えると70歳まで働かなくてはいけない時代だ。“働かないオジサン”と若造にため口を聞かれないようにしていくにはどうすればよいのか。

前出・金融業の人事課長は指摘する。

「専門的なスキルや知識を持っていることが望ましいが、むしろこれまでに培った経験・技術を後輩に伝えていくことを会社は求めている。そのためには自分は黒衣に徹し、若手を全面に出して応援していくように心がけるべきだ。後輩を育てていく力のある人は、60歳以降も働いてほしいと思う」

そうやって人の役に立てば、働かないオジサンの汚名返上とまではいかなくても、風当りは少しは弱まりそうだ。ところが、そう簡単にはいかないのが難しいところだ。

「50代の中には、過去の実績や自分の専門性を過信し、プライドだけが強い人も少なくない。自分の実績が本当に通用するのかを検証し、実力を知ることから始めたほうがよい。その上で自分がどんな役割を演じればいいのか突き詰めて考えることだ」(同上)

今では、年下の上司も珍しくない。50代の世代が使いにくいといわれるのは、過去の成功体験にとらわれ、考え方が凝り固まっているからかもしれない。だから新しいことにチャレンジしようとしない。大企業でくすぶっている社員の多くに共通する点だ。

決して能力がないわけではない。だが、会社の理不尽さや若手社員をなじっているだけでは将来は暗い。

自らマインドをリセットし、腹をくくって新しいことに挑戦してほしい。いろんな未来が開けてくるはずだ。

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