「価値観」にも「観る」がある
【窪田】為末さんはスポーツの世界で活躍されてきたわけですが、人と人とが価値観を共有できるのがスポーツの素晴らしいところだと思っています。いま世界では、些細にも思えてしまういろんなことでいがみ合ったりしている。だけど、スポーツ選手の活躍を見れば、それが誰であろうがみんなが素直に感動できる。そういうみんなが共通の価値観として大切にできるものをみんなで育てようよっていう感覚をもちつづけたいと思っているんです。
スポーツを通じて、人びとのもつ共通の価値観を広めるような活動を、為末さんにやっていただけたらなと、勝手に願ったりしています(笑)。
【為末】ありがとうございます。「価値観」にも「観る」っていう字が入っているのがおもしろいですよね。やっぱり「視点」の要素が含まれている。「観る」っていうのは、昔の人にとってはそういう広い意味だったんでしょうね。
【窪田】結局、「見る」っていうことが人間にあたえる影響は、すごく大きいと思うんです。ただ「眼で見る」という以上に、価値観にも影響をあたえるし、運動能力にも影響をあたえる。外界から入ってくる情報の多くをキャッチすることも「見る」こと。
人間にあたえる影響は大きいから、いろんな言葉にも「見る」が残っている。
【為末】価値をなにに見出すか。それが「価値観」なんですよね。
為末 大(ためすえ・だい)●1978年生まれ。2001年エドモントン世界選手権および05年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(14年10月現在)。03年、プロに転向。12年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(10年設立)、為末大学(12年開講)などを通じ、スポーツと社会、教育に関する活動を幅広く行っている。著書に『諦める力』(プレジデント社)『走る哲学』(扶桑社新書)などがある。
窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ創業者であり、会長、社長兼CEO。医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。Twitterのアカウントは @ryokubota 。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp