ピンチがくれた絶好のチャンス
会社経営において降りかかる困難は、事業や組織の規模によってさまざまです。先月までの数カ月は、アキュセラ設立以来、最大の危機に直面していたと言えるかもしれません。その一方で、試練が大きければ大きいほど、うまく乗り越えることができれば、もたらす収穫が大きいのも確かだと思います。まさにピンチをチャンスに変えるということです。
背景については 「私がCEOに復帰した本当の理由」(http://president.jp/articles/-/15321) に書いた通りで、今回はその後についてお話しします。
5月20日に東京でIR説明会を開催しました。第二の創業を迎えた気持ちで、CEO再任のご挨拶はもちろんのこと、新経営体制と事業戦略について説明をさせていただきました。
アキュセラの主要パイプライン(新薬候補化合物)に、地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性を飲み薬で治療することを目的に開発している「エミクススタト塩酸塩」という自社開発の化合物があります。現在、この疾患を発症している患者さん508名を対象に米国で臨床試験フェーズ2b/3を行っています。
2013年2月に1人目の臨床試験が始まったので、すでに2年以上の時間が経過しています。これは、予定どおり2年間毎日1錠ずつ服用し終えた被験者が出てきているということです。引き続き身を引き締めて、2016年中旬にはトップラインデータ(当該の臨床試験において事前に設定された主要評価項目データ)を公表できるよう、粛々と臨床試験を続けてまいります。
この「エミクススタト塩酸塩」のもとになっている技術が「視覚サイクルモジュレーション」といって、網膜にある光の明るさを感じる桿体細胞を休ませる作用があります。実際には見える状態だけれども過剰な光に反応しないようにするので、「飲むサングラス」と言われることもあります。
「視覚サイクルモジュレーション」技術を加齢黄斑変性だけではなく、糖尿病性網膜症などの適応症への展開を検討するため、今年、前臨床を行い、可能性を評価していく予定です。同時に、将来に向けての社内研究、M&A、新規アライアンスパートナーの開拓など、この連載でも具体的にお伝えできる日が1日でも早く来ることを願っています。