「1000人のお客さま」――それは借金

社から3年半で社内初の最上級職となり、その後ほどなく顧客も1000人を超えるまでに拡がった平石。会社からも周囲からもチヤホヤされ、舞い上がっていた自分を見直しさせられる出来事があった。

「僕よりも若いのに経営者として立派に会社を切り盛りし、一緒に勉強会などに通っていた人と会食をしていたときのことです。『おかげさまで1000人を超すお客さまを持つことができました。大きな財産ができました』と言った僕を、その人は一喝しました。『それは財産じゃない。お前の借金だ。借りているご恩をこれから一人一人に、返していかないといけないんだぞ』。頭をガーンと殴られた思いでした」

平石雅史さん

事実、契約件数が増えるほどに顧客からの問い合わせに応えきれなくなっていたのに、それをしっかり省みようとはしていなかった。「自分は成功した」などと浮かれている足元で、たくさんの借りをつくっていたことに気付いた平石は、考えた末にいったん、営業マンの看板を下ろすという思い切った選択をした。

「やり方を180度変えることにしました。すぐに契約をお預かりできそうな人を探すというスタイルをやめて、既存のご契約者をはじめ、ご縁をいただいた方のお役に立つ活動をするようにしたのです。『あの人には、こんな人を紹介したら役立つだろう』『今日はこんなことをしたら喜んでもらった』と、お役立ちノートを付け始めました。

すると、しばらくして、以前なら相手にしてもらえなかったような人からも、声をかけていただけるようになりました。営業マンの看板を下ろしたら、結果的に営業活動に深みや広がりが生まれた。僕は営業マンでなくなることで初めて、一生にわたって営業マンとしてやっていけると思えるようになったわけです」

※本連載は書籍『アメリカ本国を驚愕させたプルデンシャル生命の「売る力」』からの抜粋です。
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