ちなみに、「ごみは、捨てた時点で所有権を放棄しているものだから勝手に見たっていいじゃないか」という理屈は通用しない。
「所有権とプライバシー権は別です。病院のカルテの所有権は病院にありますが、それを漏らせば患者のプライバシー権が侵害されます。ごみも同じ。所有権の所在に関係なく、本人の了承なく開封すれば、プライバシー権の侵害です」
違反ごみを見たらどうすべきか
開封調査について明確にしておいたほうがいいのは、マンションの管理組合や自治会などでも同じだ。分別されていないことを理由に自治体がごみを回収せずに放置するケースがあるが、元の持ち主を調べようと開封すると、プライバシー侵害になるおそれがある。誰のごみか調べたいなら、管理組合であらかじめ開封調査のルールを定めて合意を得ておいたほうがいい。
言うまでもないが、個人的な覗き趣味から他人のごみを開封するのもプライバシー侵害になりうる。
自治体がやるにせよ、住民がやるにせよ、開封調査をしないで済めば、それに越したことはない。ごみ袋に名前を書いたり監視カメラを置くなど、他の対策も模索したいところだ。
(答えていただいた人=弁護士 板倉陽一郎 図版作成=ライヴアート)