「捨てたもの」のプライバシーは?
家庭ごみの分別ルールを守らない違反者を特定するため、ごみの開封調査をする自治体が増えている。政令指定市では横浜市、千葉市、札幌市。来年度は京都市も導入予定だ。
分別の徹底でごみの減量を図りたい自治体の意図はわかる。しかし、ごみの中には、センシティブなものや個人情報も含まれている。開封調査はプライバシー権の侵害にあたらないのだろうか。板倉陽一郎弁護士はこう解説する。
「プライバシー権が国家との関係で憲法上保護されるのは、争いがありません。ただ、無制限に認められるのでなく、必要に応じて制限される場合もあります。たとえば刑事事件での家宅捜索や、税務調査などがそうです」
公益を目的にしているという意味では、ごみの開封調査は刑事事件の捜査や税務調査と同じ。しかし、大きく違う点もある。手続きの厳格さだ。
刑事事件で捜査機関が家の中を調べるときは、裁判所で令状を得る必要がある。また、税務調査では、調査官は通常より重い罰則付きの守秘義務を負っている。それに対して、ごみの開封調査に関する手続きは曖昧だ。
「開封調査している自治体の条例を見ても、開封調査を明文化した条項はありません。解釈で可能だとしても、どのような場合に開封して、どこまで調べるのか、調査員は得た情報につきどのような取り扱い義務を負うのかといった手続きが書かれておらず、フリーハンドでできるようにすら読めます」
これでは市民は安心してごみを出せない。開封調査を進めるなら、手続きの明確化は欠かせない条件だろう。