治安や危険性など、動く「理由」を訴えよ
騒音や悪臭をまき散らす隣人や、路上駐車、ストーカーといったトラブルは、解決が難しい問題のひとつ。弁護士の高橋裕次郎氏は、特有の難しさについてこう語る。
「この手のトラブルには、まず法的な問題なのか否かという判断が必要です。暴力行為などが伴わないと、民事的な問題としては捉えやすいのですが、刑事的な問題としては、事件化するには難しい場合もあります」
たとえば隣人が弾くピアノの音が耐え難い場合、隣人の行為は、民法上の不法行為となる可能性がある。しかし、ピアノの音が受忍の限度を超えているかどうかの判断は、微妙だ。
「裁判所に訴えるためには、ピアノの音が受忍限度を超えていることを立証する必要があります。また、どのような実害が発生したかの立証も必要です」(高橋氏)
被害の立証には専門家に意見書を書いてもらうのが有効だが、これが難しい。近隣トラブルやストーカー被害の解決が専門の平塚俊樹氏は、こう語る。
「騒音測定の専門業者は存在しますが、彼らが相手にするのは建設会社などの法人。個人は相手にしません。また、実害の立証には騒音と精神疾患などの因果関係を明記した診断書が必要ですが、かかりつけの医者でもない限り、そんな診断書は書いてくれません」
では、泣き寝入りするしかないのだろうか。平塚氏が言う。
「実は、近隣トラブルの場合、法的な解決を求めるのは最悪の選択です」
平塚氏によれば、被害者の90%以上が法的な解決を目指すが、そのほとんどが挫折してしまうという。しかも、事を荒立てた結果として……。
「法律以外の方法で相手から報復を受けるケースが多く、下手をすれば刺されます。なるべく、相手の恨みを買わない落としどころを模索すべきです」
この点は、高橋氏も同意見だ。
「過剰に挑発的な態度に出ることは禁物。相手との直接的なやり取りはなるべく避け、弁護士などを代理人に立てて交渉に当たらせるべきでしょう」