昔ながらの「詰め込み型」研修の衰退
「この忙しいときに研修か……」
企業に勤める方の中には、企業内で行われる研修に対して「強制的に参加させられ、長時間、研修室に詰め込まれ、ひたすら講師の話を聞く憂鬱な時間」といったマイナスイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。あるいは「研修後に開かれる同期との懇親会だけが楽しみ」という方もいらっしゃるのでは?
しかし最近は、こうした一方的に講義を聞く「知識詰め込み型」の集合研修は減る傾向にあり、数人で話し合いながら進めるグループワークや、実際に手を動かすなどの活動を行うワークショップ型の研修も増えています。
なかには、部下マネジメントを演劇で体験できる研修、会社の社長になって会社経営を体験できるゲーム型研修、そして、複数の他社の人と協働し、地方の町おこしを考えて提案する研修まで、多様化しています。
「こんな研修にどんな意味があるんだ?」と、思うかもしれませんが、一見遊びのように見える研修にも意図があり、その背景には、企業が抱える人材育成上の課題が見え隠れしています。そこで、今回は昨今の企業内研修のトレンドを紹介しつつ、その意味について考えていきたいと思います。
まず、企業内研修における、この10年ほどの間の一番大きな変化は、強制的かつ一方的にただ講義を聞く「知識詰め込み型」や、「それぞれの受講者が講義を個々に聞き、孤独に学ぶ」研修が少なくなったということです。もし皆さんのお勤めの組織が、いまだにそのような何の工夫もない研修をしているとしたら、人材開発のトレンドからは大きく遅れているといえます。
昨今の企業内研修では、知識を詰め込むというよりも、手や足を使って実習をしたり、普段は考えないような振り返りや問題解決を行う研修が増えてきました。またそのような研修では「1人で孤独に学ぶこと」よりも、チームやグループなどで、様々な人々とコミュニケーションしながら学ぶことが重視されています。
もちろん、そうはいっても、知識を蓄積すること、暗記することは必要です。そうしたものはむしろ、PCやスマホを使ってオンラインで自己学習することが期待され始めています。知識の暗記を効率化したい新入社員教育などについては、スマートフォンを介して学ぶ、“スマホラーニング”を導入している企業も多いようです。
知識の伝達だけならばオンラインで十分可能になった今だからこそ、オフラインで対面で集まったときには、リアルタイムではなかなか実現できない、高い付加価値のあるインタラクティブな活動が目指されるというわけです。