証券業のように歩合制ではない
もちろんマネジメントになるのは難しいといっても、MRの処遇は総じて悪くはない。むしろ他の業界の営業職よりは高い。国内製薬業の人事担当者は他の業界に比べて2~3割程度高いのではないかと指摘する。
「もちろん業績によって異なるが、20代後半で700万円から800万円をもらっている人は珍しくない。私がMRを担当していた30代半ばの頃は1100万円だったが、低い人でも700万円から800万円をもらっていた。それでも他の業界よりも高い。また、給与だけではなく、住宅手当や教育研修、退職金も充実している。MRは全国で働くが給与は東京も地方も一緒であり、10万円する家賃も住宅補助が出て実質2万円程度ですむなど優遇されている」
MRの給与は証券業のように歩合制ではなく、グレードごとの昇給と業績反映の賞与で決まり、大きく変動することはない。また、最も高い報酬をもらっているMRでも「本社の課長職と同じ1100~1200万円ではないか。46~47歳の本社の部長職が1400~1500万円をもらっているが、それだけもらっているMRは当社ではいないだろう」(外資系人事担当者)
本社の幹部クラスの報酬には届かないとしても決して低い金額ではない。もう1つ、コーポレートスタッフ職に比べて実績のあるMRは転職に有利だ。外資系製薬の人事担当者は次のように話す。
「製薬メーカーがこれまでにない新しい薬、たとえば抗癌剤の薬を売り出そうとする場合、薬に関しては知識が乏しく、売り込み先の専門の医師も知らないとなれば、他の製薬会社の専門のMRを採用することになる。転職する人にとっては所属する会社が変わるだけで、これまでの癌の知識と担当する先生は一緒であり、継続して仕事がやれる。外資系ではスペシャリストのMRは頻繁に転職している」
転職者の報酬は自社の給与テーブルに基づいて決まるのが一般的だが、MRに関してはすでに市場価格が形成されているという。それをベースに具体的な報酬額は、これまで扱った薬の領域と担当先などの職務経歴と売上額などの実績を評価して決定される。高齢社会の日本では医療に対する需要が益々高まっている。高報酬を誇るMRは将来にわたって有望な職種といえるだろう。
「管理職ができます」ではどこの会社にも転職できないのが常識だ。営業職でも特定分野の専門性に秀でていなければ生き残ってはいけない。今から、将来を見据えて特定分野のエキスパートとしてのスキルを磨いていくことをお勧めする。