転職し放題の「プロ営業職」

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「MR」のポイント

もう一つは製薬会社のMR(医薬情報担当者)と呼ばれる営業職だ。同じ営業職でも業種によっては国内事業の縮小・撤退によってリストラの憂き目に合う人もいるが、日本の製薬市場は約9兆円(主要企業62社計)。世界第2位を誇る日本の製薬マーケットの中では、MRは転職市場でも引く手あまたの職種だ。

その数は日本全国に約6万人。製薬業界の第三者機関である公益財団法人MR認定センターが実施する試験をパスした人に与えられる認定資格であり、医師や看護師のような国家資格ではない。

したがって資格はなくても営業活動はできるが「ドクターなど医療業界で信任された資格であり、なければ信用されず暗黙のうちに取らなければならない」(外資系製薬の人事担当者)。多くの製薬企業では入社後に資格を取るための研修を行う。

採用に当たってはほとんどの企業が研究職や開発職と並んでMR職の職種別採用を行っている。当然、MR職の採用学部は薬学部など理系学部が大半を占めると思うかもしれないが、採用学部不問という企業が多い。

MRのキャリアパスとしては30代半ばまでに、MRとして専門性を高めていくのか、コーポレートスタッフとしていろんな部署を経験し、マネジメントの道に進むのか選択を迫られることになる。会社が管理部門への異動を命じることもあれば、自己申告や社内公募を通じてスタッフ部門に転じる人もいる。同じMRでもエキスパートもいれば、現場の営業所長、支店長になってマネジメントを担当する人もいる。あるいはMRの経験を生かし、学術担当者として教育に携わる人もいる。

外資系でも同じだ。外資系製薬企業の人事担当者は語る。

「当社は2000人のMRがいるが、マネージャーは10人に1人の割合、200人程度だ。管理職適齢期の30代後半のMRが400人いるが、3年以内にマネージヤーになりたいと希望してもなれないのが現実だ。スペシャリストの道を進もうと思えば、癌やリューマチ、ワクチンなどの限られた領域の専門性を磨き、専門の大病院の先生の担当になるのも一つ。全国的にも有名な先生のつながりを持つことで本人のモチベーションだけではなく、社内の評価を高めることにもつながる」