高い報酬、厚待遇「なるなら今」

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「アクチュアリー」のポイント

1つはアクチュアリー(数理人)だ。

尖閣諸島の領有権をめぐる中国での暴動やタイの大洪水で日本企業は多大な被害を被ったことがある。しかし、店舗や工場の多くは損害保険に加入していたために、被害金額の相当額は保険会社から支払われた。そうした暴動や洪水はどのくらいの確率で発生するのか。様々なデータに基づいて発生リスクを予測し、保険料率を算定するのがアクチュアリーの仕事だ。

アクチュアリーは生命保険事業や損害保険事業だけではなく、共済事業や企業年金の掛金の設定など年金事業では不可欠な専門職とされている。具体的には生命保険会社や損害保険会社の商品開発部門や数理部門、信託銀行の年金信託部の数理部門に所属している。そのほか、監査法人や年金コンサルティング会社も抱えている。日本ではアクチュアリーという名前はそれほど知られていないが、アメリカでは医師や弁護士と並んで人気資格のトップ3に入ると言われている。

アクチュアリーは国家資格ではなく、認定資格だ。社団法人日本アクチュアリー会が行う資格試験に合格し、正会員に認定された人をアクチュアリーと呼ぶ。試験は第1次試験(5つの基礎科目)と第2次試験(2つの専門科目)に分かれるが、試験は年1回(12月)しか実施されないので資格を取得するには最短でも2年かかる。だが、そんな人は極めて希だ。

会員は準会員を含めても2千数百人程度である。アメリカの10分の1程度あり、人口比から見ても日本のアクチュアリーは少ない。生・損保や信託業界に所属しているアクチュアリーが最も多く、大手生命保険会社に30~40人、大手信託銀行に50人程度在籍している。最近は信託銀行の統合が進み、100人近くのアクチュアリーが存在するところもある。

入社後は生・損保会社、信託銀行の数理部門に配属されて実務を経験する。仕事の内容は生・損保業界では保険商品を開発する商品開発部で発売する保険料率の計算業務に従事する人、あるいは経理部門で生保会社が将来の保険金を支払うために積み立てておく「責任準備金」の算定などを行っている人もいる。

年金数理人になるには、実務経験が最低5年、責任者としての実務経験が2年以上あることが求められる。できればアクチュアリー資格を取得し、30歳で年金数理人になるのが最も望ましい。

気になるのはアクチュアリーの報酬だ。

日本の生・損保会社や信託銀行は基本的に新卒で採用し、内部で育成する。当然、初任給は他の総合職と同じだ。その後にアクチュアリーの認定試験の成績に応じて手当を支給しているところもある。大手信託銀行の人事担当者は処遇についてこう語る。

「同じ総合職であり、賃金制度も同じ。ただし、数理部門については、グレードごとの給与額に科目合格者には5万円、準会員は10万円、正会員になれば20万円の手当を上乗せしている。数理という特殊な仕事であり、しかも会社の業務以外の時間を使って勉強しなければならいない。会社の中では数はそれほど多くはないし、わざわざ別の賃金制度を作る必要もない。専門職手当として内部では納得してもらっている」