自分や家族の「もしも」に備え
「マイケアプラン」を作成しておく
介護する人に占める男性の割合は年年増加しています。2004年のデータによれば、全体の28.2%を男性が占めていて、今や「男も介護」は決して特別なことではなくなっています。
しかし男性にとって、初めて経験する介護は戸惑いも多いものです。女性なら、将来自分が介護にあたる姿をイメージする機会も多く、家事や育児の経験を介護に生かすこともできますが、男性は違う。経験的にも心理的にも、男性は「備えなき介護者」なのです。
働き盛りの男性にとって、介護は仕事や家計に大きな負担を強いるものになりかねません。介護だけを優先させると、時間を確保するために仕事を辞める、仕事を辞めると家計が圧迫される。そのスパイラルが介護の負の側面です。それを避けるには、どれか1つを選ぶのではなく、三者を両立させる必要があります。
現在では大企業を中心に、介護のための休暇制度も整ってきつつあります。1995年に導入された介護休業制度をはじめ、ILO(国際労働機関)は「介護する権利」や「介護される権利」を提唱しています(第156号条約)。
年間20日間までの在宅勤務を認める介護支援の適用範囲を拡大する企業や、制度利用期間の上限を延べ24カ月までとし、より従業員の生活の実態に対応したものとしている企業など、先進的な介護支援制度を設ける企業も出てきました。
勤務先に介護休暇制度がなくても、会社側と話し合って勤務時間を調整するなど、仕事と介護を両立させる男性も現れています。介護は労働者の権利だと認識し、堂々と主張すべきで「働きながら介護できる社会」でなくてはいけません。
では突然、自分や家族に介護が必要になったとき、慌てないためにどうするか。それには前もって「マイケアプラン」を作っておくことです。介護が必要になった場合を想定し、自分や家族にとって最適なプラン、利用可能なケアサービスを家族で話し合っておく。介護を家族全員の問題とするのです。
人は本来、「ケアの衝動」を秘めています。病んだ家族に対して何かしたい、手を尽くしたい。しかしべったり付き添って介護するというスタイルでは、介護家族が孤立しがちです。制度サービスの利用も念頭において、介護のあり方を考えることが大切です。
もちろん「介護は大変だ」という思いもあるでしょう。しかし、仕事人間から一転、介護を始めた男性の中には「近隣との関係が良くなった」と感じている人もいます。近所の人が夕ご飯のおかずを届けてくれたり、折に触れて様子を見に来てくれたりといった行為に励まされるのでしょう。
地域社会の人間関係が疎遠になる中、介護は生身の人と人との支え合いを復活させる手だてにもなる。男の介護は、今まで見えなかったものが見えてくる貴重な経験なのです。