「正社員クビ自由化」時代も到来間近!? 鳴り物入りのアベノミクスは、しかし、「個人」を守ってくれるわけではない。何歳になっても、働きながら勉強し続けることが身を助けるのだ。

「20代のうちは簡単な仕事を与えられることが多いでしょう。大事なのは、その業務を適当にこなすのではなく、仕事の本質的なことを学ぼうとする意識。将来、経営やマネジメントに関わる仕事をしたいならなおさらです」とは、経営コンサルタントの小宮氏である。

簡単な仕事にはマニュアルがあっても、経営やマネジメントにこれといって決まったマニュアルはない。企業や組織の舵取りには、初歩的な仕事に潜む「本質」までをきちんと知って取り組んだ経験が生きてくるというのだ。

「一人前は、まだ二流。一流になりなさい」

では、本質とは何だろう。

世界的に知られる建築家の安藤忠雄氏の最終学歴は、大阪の工業高校。家庭に経済的ゆとりがなかったため、大学進学を断念したといわれる。

しかし、安藤氏は、あるとき建築に興味を抱き、大阪大学と京都大学の工学部建築学科の学生が講義で使う書籍をすべて読破したそうだ。その勉強習慣が、見た人をハッとさせる卓越した美しいデザインを生み出すことになったのである。小宮氏は語る。

「僕が新卒で就職した東京銀行で、配属された先の支店長がやってきていいました。『小宮君、定期預金の裏側って読んだことある?』。新人の僕は窓口カウンターで定期預金をつくるお客さまの応対をしていました。その作業にはマニュアルがあり、慣れれば苦労せずに事務処理できます。でも、支店長にそういわれ、裏側を見ると、定期預金を組む人向けの契約条項が書いてあった。当時の僕の心境は、『こんな小さな字を読むのは面倒臭いなぁ』でしたが、支店長は仕事の“深いところ”を遠回しに教えてくれたんだと思います」

窓口業務は字がキレイで、簿記やそろばんなどの訓練を受けている人のほうがふさわしいかもしれないが、新卒で入った社員はいつか定期預金など金融商品を設計する側に回ることもある。そのとき、基本をきちんとおさえて仕事をしてきたか否かが問われる。目の前の仕事をただ右から左へ流していては、その後の成長は望めないということだろう。