「正社員クビ自由化」時代も到来間近!? 鳴り物入りのアベノミクスは、しかし、「個人」を守ってくれるわけではない。何歳になっても、働きながら勉強し続けることが身を助けるのだ。
「上位2割」に入るなら勤勉習慣しかない
「二極化が、超速度で進んでいます。今後さらに進むのは必至です」
2人のMBAホルダーの経営コンサルタントは同じ言葉を口にした。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)出身の小宮一慶氏と、リクルート(法人営業)出身の大塚寿氏は、経営者からの信頼が厚く、各現場の状況を知り尽くす。
アベノミクスによるいささか根拠不明な景気浮揚のムードが漂う一方、安倍政権は、「正社員クビ自由化」など、人材流動化促進の名目で、実質はブラック企業まがいの労働環境の制度を導入することを真剣に検討している。うかうかしている場合ではないのだ。
「激しい二極化は、経済状況がやや明るさを取り戻した今も進んでいます。勝ち組・負け組が鮮明な企業だけではなく、ビジネスパーソンの選別も容赦ありません。収入も仕事も、一部のできる人に集中する構図が年々明確化していますね」(大塚氏)
以前から会社などの組織内にあるといわれる「2・6・2の法則」。実績・生産性が高い上位の2割、平均的パフォーマンスの中位が6割、実績・生産性ともに低い下位の2割。かつては中位以下の面倒を見る余力があった企業も今や生き残りに必死ゆえに、どうしても上位2割が優遇される結果になる。
「上位2割に入る人と、それ以外の人。何の差かといえば、勉強量の差です。同じ大学を出て、入社当時はほぼ同様の能力でも、30代後半から40代前半の頃になると、その差が想像以上につく。勉強を怠っていた人がそのときに気づいても後の祭りです」(大塚氏)
一方の小宮氏も、ビジネスパーソンにとって勉強習慣が何よりも重要だという考えの理由として、さらに二極化が進むであろう社会の到来をあげる。
「ひらたくいえば、コンピュータに仕事を奪われる人が今後もすごく増えていくということです。昔はスーパーのレジ打ちの達人のような人がいたけれど、今はピッピッと商品のバーコードを機械にかざすだけでいいから新人の低賃金の人にもできる。経理だって、以前は貸借対照表を読めて帳簿もつけられないといけなかったけれど、現在は伝票さえパソコンに打ち込めば決算書まで作ってくれる。簡単な作業の労働はなくならないまでも、機械ができる労働の単価は下がるでしょうね」(小宮氏)
その一方、営業職や研究職、経営者などは機械任せにはできない。それだけに能力差が出やすい。能力を出せる分野で能力を出した人には高い報酬がついてくる、と小宮氏はいう。では、いかに周りより能力を発揮するか。
「例えば、工場の単純労働をしている人が、工場のラインを設計し管理する側に回るくらいの猛勉強。それをこれからのビジネスマンはしないといけないのだと思います」(小宮氏)
1962年生まれ。リクルート勤務後に渡米。MBAを取得し、現在オーダーメイド型営業研修や法人コンサルを。新刊『9割の人ができるのに、やっていない仕事のコツ』発売予定。
1957年生まれ。京都大学卒業後、東京銀行に入行。米留学(MBA取得)などを経て現職。十数社の非常勤取締役や監査役を。『ビジネスマンのための「勉強力」養成講座』など著書多数。