がんばっているのに成果が出ない。そう感じているビジネスパーソンも多い。第一線で活躍し続けるにはもちろん、自己研鑽が必要だ。だが、その勉強は本当に、仕事の役に立っているのだろうか。ハイパフォーマーの学びの習慣を、600人アンケートの結果を交えながら紹介しよう。
▼神永正博さんからのアドバイス

数学も数字を扱うスキルの一種といえます。ただ、スキルというのは一朝一夕に身につくものではありません。人が生まれてから数学という道具を使いこなせるようになるまで、どれくらい時間をかけているか振り返ってみてください。

子どものころに数を数えるところから始まり、微積分を習得するまで十数年。スキルの獲得には、それくらい長い期間が必要なのです。そう考えると、スキルの習得にはできるだけ若いうちから取り組んだほうがいい。大人になってから必要が生じたときも、思い立ったらすぐに勉強を始めるのがよいでしょう。

面白いもので、数学を突き詰めていくと、社会学や経済学の知識がなくても社会科学系の論文を批判的に読むことができるようになります。

単にデータの読み方がわかるというだけではありません。主張がどのようなロジックで組み立てられていて、その裏付けはどこにあるのか。そうした学問の作法は数学も社会科学も同じなので、つじつまの合わないところや論拠の弱いところがあればピンとくるのです。

そういう意味では、数学でなくても何か1つ、専門分野を深掘りしておくことも大切です。教養というと文学や歴史など文系の知識をイメージする人が多いかもしれませんが、理系の軸でもいい。徹底的に掘り下げて自分のものにしておくことで、他の分野にも応用が利きます。

神永正博●東北学院大学教授
1967年、東京都生まれ。東京理科大学理学部卒、京都大学大学院理学研究科博士課程中退。東京電機大学助手、日立製作所研究員を経て、東北学院大学准教授に就任。2011年より現職。著書に『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』など。