▼木暮太一さんからのアドバイス
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資格よりも、英語・教養・会計を重視

スキルばかりを追い求める人がいるとすれば、スキルをドラクエの呪文のようなものだと考えているのだと思います。ゲーム内でプレーヤーは、敵を倒しながら経験値を積んでいきます。経験値が一定に達すると、レベルが上がって新しい呪文を獲得。呪文を覚える前と後では強さがまったく違うので、プレーヤーはいわば階段型に成長していくことになります。一方、現実の世界は違います。私たちはゼロからイチへといきなり飛躍するのではなく、0.5や0.99を経つつ、アナログな曲線を描いて成長していくわけです。

ゼロイチで考えてしまう人は、いつのまにかスキルを獲得することが目的になり、資格を取ったりTOEICで高得点を取っただけで満足する傾向があります。

肩書を充実させることも大事ですが、スキルを適切に使いこなすには、それなりの経験値が必要です。しかし経験値はゼロイチでなく、少しずつ積み上がっていくもの。すぐに使いこなせるようにはならないのですから、コツコツと自分の目標に取り組めばよいと思います。

結果が出ないと不安になるかもしれませんが、焦る必要はありません。私は「人は1年でできることを過大評価して、10年でできることを過小評価する」という言葉を肝に銘じています。つまり、1年で成し遂げられることは思っているより小さいが、小さいことを積み重ねれば、10年後には想像以上に大きなことができているということです。

勉強もこれと同じです。まったく前に進んでいないように思えても、今日の努力は必ず経験となって、いずれは大きな実をつけます。

木暮太一●作家
1977年、千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て、独立。大学在学中に自主制作した「気軽にはじめる経済学シリーズ」はロングセラーに。著書に『今までで一番やさしい経済の教科書』など。