この国を壊滅的に低迷させた元凶とは

リーダーの役割とは、本質的な問題を解決することなのだ。サッチャーがイギリス病を退治できたのは問題の本質部分を解決したからである。松下幸之助も本田宗一郎も本質論で勝負して世界に冠たる企業を築き上げた。だから欧米は日本の企業を恐れたのだ。

ところが政治においては日本のリーダーたちは本質的な問題解決を先送りして回避し続けてきた。先送りしても人口が増え、経済が成長した時代ならいい解決策が見つかるかもしれない。しかし先細りの未来に先送りしても問題は決して解決しない。国債の大量発行を続ければ当然リスクは高くなる。リーダー不在とは、本質的な問題解決ができないまま放置されるということなのだ。国民もそれに対して全く危機感を持たない「ぬるま湯」状態だ。

かつて「経済一流、政治三流」といわれた日本だが、その経済も今となっては財界に日本の混迷を打ち破るようなリーダーは見つからない。

サムスンが20年までに40兆円企業を目指す壮大な計画を発表したというのに、ソニーから聞こえてくるのはサムスンと直接競合する分野の商品開発はやめるとか、コストダウン関連の情けない話ばかり。富士通では前社長の解任問題が泥沼の内紛に発展し、日立でも短期間で社長が交代する異常事態だ。日本を代表するIT企業が社長一人まともに決められない惨状、と言ってもいい。

世界に冠たる日本企業の最後の砦だったトヨタも、創業家への大政奉還で誕生した章男社長がアメリカの公聴会で惨めな演説をすることになり、一連のリコール問題で組織が揺れている。

大学やアカデミズムの世界でもリーダーに足る人材は少ない。かつては東北大学の金属材料研究所や京都大学の基礎物理学研究所など世界トップレベルの研究拠点がいくつかあった。唯一明るい話題は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)で世界に先鞭をつけている京都大学の山中伸弥教授ぐらいか。