傑出したリーダーが劇的に変えていく!

一人のリーダーの出現で国家がシェイプアップされる事例は少なくない。

英国病と揶揄され、あと200年は没落したままと言われたイギリスは、「鉄の女」サッチャーの登場(79年)で劇的に生まれ変わった。今の強いアメリカの礎を築いたのはやはりレーガン一人であり、70年代後半の(今の民主党政権のような大きな福祉政府を推進した)カーター政権が続いていればアメリカの再生は大幅に遅れただろう。ゴルバチョフ一人でソ連共産主義を打ち倒し、プーチンは一人で新しいロシアをつくり上げたのだ。

ちなみに昨今、「鉄のお嬢さん」と呼ばれているのがドイツのアンゲラ・メルケル首相。地元ドイツだけではなくヨーロッパ各国から希望の星として期待を集めている。サッチャーとメルケルの共通点はともに物理学を専攻した科学者で、自由主義経済とスモールガバメント(小さな政府)を信奉する筋金入りの保守主義者であることだ。ヨーロッパの未来は当面、メルケル抜きでは語れないだろう。

一人の傑出したリーダーを得ると組織が変わる――。こうした例はビジネスの世界では枚挙に暇がない。たとえば、今韓国で強いといわれる企業は、すべて一人のリーダーの存在で説明できる。

サムスン電子は副会長兼CEOの李潤雨氏。二代目会長の李健熙氏が中興の祖といわれているが、技術開発や対外交渉における実質的な立役者は李潤雨氏である。LGは副会長兼CEOの南鏞氏。現代・起亜自動車グループなら会長の鄭夢九氏。

かつて松下電器(現パナソニック)の松下幸之助、ソニーの盛田昭夫、ホンダの本田宗一郎や藤沢武夫らが登場してきた戦後~高度成長期の時代、日本のバイオリズムは高かった。それとまったく同じようなフェーズに今の韓国はきているのだ。そして現代建設で国際的な入札競争の修羅場をかいくぐり、同社を韓国のトップ企業に押し上げた伝説的な経営者の一人が李明博氏。その李氏が大統領として国家経営を牽引しているのが今の韓国の強みだ。

今の日本には組織を変える力を持った人材があらゆる分野でいない。

政治の世界では、すでに国民に見切られはじめた民主党、攻勢に出られないままメルトダウン状態を迎えている自民党、いずれにも日本を反転させるような人材は見当たらない。「家業」として首相をやるハングリーさもリーダーシップもない人物が、ここ連続四人登場している。自民党も民主党も関係ない。指導者がいない国。それが今の日本だ。

鳩山由紀夫首相が5月決着を宣言した沖縄・普天間基地の移設問題でも、辺野古以外の移設先を探そうにも、学生のアイデアコンテストのような一夜漬けの代案しか出てこない。訓練だけ県外に持っていくキャンプシュワブ移設案を国民新党が持ち出し、政府もその方向で検討しているようだが、結局は抜け道のようなアイデアであって基地の県外移設という本質的な問題解決には遠い。