一流の経営者に共通すること

アリババ会長・馬雲氏と会食をする稲盛氏。2人が会うのはこれで2回目だ。

一流の経営者は私欲を満たすことにかまけたりはしない。むしろ非常に謙虚である。杭州市で稲盛氏と面会した中国人企業家、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏もまさにその一人といえる。馬氏は、中国を代表するネットショッピングサイト「淘宝網(タオバオワン)」やネット決済システム「支付宝(アリペイ)」を開発。時価総額は20兆円に達するともいわれる中国ネット界の巨人である。

彼とは、日本で1回お会いしていますので、今回で2回目になります。これまでも、大変立派なお仕事をして成功された方だと理解していましたが、今回親しく食事をしながら話をして、彼の人間性にも強く印象づけられました。単に才能があって成功した、というのではなく、すばらしい人間性も身につけている方だったのです。今までいろんな経営者にお会いしてきましたが、一流の人物だと思いました。

馬さんは「まさに仕事の場が、修行だと思っていて、辛酸をなめて自分の心を高めている」と語っています。仕事を通じて、あたかも禅のお坊さんが座禅をしながら自分の人間性を高めていくのと同じように、彼は仕事を通じて、つまりは仕事の修羅場をくぐりながら、すばらしい人間性をつくってきているのです。

経営者というのは、あらゆる面で日常の仕事の中、大変厳しい環境に置かれたり、いいときもあったり、悪いときもあったりと、いつも予期せぬことに見舞われます。それがまさに修行で、うまくいかなくなったときに動揺したり、うまくいったからといって有頂天になったりしてはいけません。いいときでも、非常に厳しい環境の中でも頑張っていくということがまさに修行であって、そうした経験を経ていくことで自分の心が高まっていくのですね。

このように中国にもすばらしい経営者はたくさんいます。中国のいい点をもっとよく知り、日本人と中国人はもっといい付き合いをしていかなければならないと思っています。

仕事を「修行の場」と捉えることが、自分自身を高めるための最良の手段。それは、経営者のみならず、ビジネスマンを含めたあらゆる人々に通じる考え方だろう。