2014年6月29日。中国・浙江省杭州市の人民大会堂は興奮に包まれ、お祭り騒ぎと化した。「稲盛和夫経営哲学報告会」の会場に本人が登場したのだ。熱狂冷めやらぬ報告会の後、プレジデント特別取材班が稲盛氏に取材した。

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(上)リーマンショックで中国人経営者に激震 (下)賃金アップと働き手の減少で人手不足に!

世界第2位の経済大国、中国。だが、リーマンショックで中国経済はブレーキがかかり、永続的に経済成長が続くという幻想は打ち砕かれた。さらに最低賃金の上昇、2012年から始まった生産年齢人口の減少により、労働力確保が難しくなってきている。労働争議も頻発し、製造業を中心に「ポストチャイナ」を目指す動きも活発だ。政府はなんとかしてバブル崩壊を防ごうと躍起になっているが、そんな中国の経済界で今、熱狂的な支持を集める日本人経営者がいる。京セラ名誉会長、稲盛和夫氏である。

上海から高速鉄道で1時間ほどの距離にある浙江省杭州市。歴史ある寺院に囲まれた湖「西湖」は世界遺産に指定されており、この街のシンボルといえる。その歴史ある中国の古都で今夏、「稲盛和夫経営哲学杭州報告会」が行われた。中国人経営者が約2000人参加、稲盛氏が会場に姿を見せると、一斉に立ち上がり、盛大な拍手で出迎えた。反日感情が極度に高まる中で、日本人が熱烈に歓迎されるのは異例中の異例のことだ。プレジデント編集部は現地に行き、講演後の稲盛氏に直接話を聞いた。

(上)2014年稲盛和夫経営哲学報告会が6月28、29日に杭州で行われ、中国人経営者約2000人がつめかけた。29日の報告会に稲盛氏が登場すると会場は一斉に沸き立った。 (下)報告会の会場には企業のブースが並び、稲盛氏が訪れると、たちまち人だかりができた。

10年ほど前、私が主宰している「盛和塾」を中国の方々が見て、「中国でも稲盛さんの考え方を直接聞いて学びたいので、盛和塾をつくりたい」と言われました。盛和塾とは、もともと京都の若手経営者が私の経営哲学や人生哲学を学ぼうと集まった自主的な勉強会から始まったもので、経営者の塾生が自らの経営体験を発表し、それに私がコメントしたりするものです。

そこで日本の盛和塾の塾生さんたちと中国に行ってみたところ、大勢の中国人経営者の方々が集まり、大変充実した報告会となりました。その後も中国の各地で報告会を行いましたが、どこの会場でも私の話に熱心に聞き入り、大変歓迎していただきました。

たしかに日本と中国の間では、尖閣諸島の問題などがあり、中国政府の姿勢も厳しくなるなど、難しい局面にあります。しかし中国人経営者の方々は変わらず、私を喜んで迎え入れてくれます。これまで長く続けてきた、心温まる交流あってのことでしょう。