「イナゴ軍団」が買い漁る不動産

最高指導者・鄧小平(トウ・ショウヘイ)氏の「統一後も50年は自由を存続させる」という台湾へのメッセージだった一国二制度。北京政府は軽率にもそこに介入し、みずから壊した。(写真=AFLO)

北京政府は03年、香港との経済をさらに緊密にするための協定「CEPA」(Closer Economic Partnership Arrangement)を結びます。サービス分野を中心に、通常では得られない規制緩和を享受できる特権的地位を香港に与えたのです。そして「人の往来」も緩和した。ところが、実はこれが曲者でした。

従来、大陸と香港の人的往来はあまりなかった。香港人は幼い頃から「大陸には魔物や獣が住んでいるから行っちゃいけない」「深センというところには怪物がいる」などと教え込まれていたのですが(笑)、CEPAと併せて実施された規制緩和で何度も往復できる通行証が発行され、大陸の人々が続々と入って来た。「CEPAは、SARSで欧米人も逃げ去った香港のための協定だ。人数が多い中国人を大量に観光客として送り込んでやるのだ」というのが北京政府の理屈だったわけです。

その結果、何が起きたか。大陸から不動産投資でやって来た「イナゴ軍団」と呼ばれる人々が、03年から下落していた不動産を買い漁り始めたのです。そのため不動産価格が凄まじい勢いで天文学的な数字へと暴騰した。80平方メートル程度の私の居宅でさえ、日本円で2億円ほどになりました。市の中心部だと1億円程度では絶対にマンションは買えません。大スター、ジャッキー・チェンの住み家なんて50億円! 夫婦共働きでも「子どもを持つか、不動産を持つか」の二者択一を迫られるほど高騰したのです。