「賞与アップした」ことにしたい理由

筆者はアンケートに回答した会社を教えて欲しいと言ったが、回答は「賞与に関する調査対象の企業は非公開」だった。経団連のHPには現在、企業会員が公開されているが(筆者の調べでは公開は最近になってからのこと)、どうやらボーナス調査対象はその企業会員すべてではなく、ごく一部のようだ。結局のところ筆者にしてみれば「経団連なんて、雲の上の存在」でしかない。一部の大手企業が入っていることは想像できるが、実感が沸かない存在なのだ。

「雲の上の存在」は各地方にもある。筆者の地元ではこんな記事が載った。

「愛知県経営者協会は5日、会員企業の2014年夏季賞与の調査結果を発表した。妥結平均は前年比5.08%増の59万6825円(基準内賃金の2.20カ月分)で、リーマン・ショック前の08年の約60万円に迫る水準となった。一方、会員企業を対象とした14年春闘の調査では、基本給を一律に引き上げるベースアップを実施したのは約5割だった。」(読売 2014年8月6日)

こんな記事は読めば読むほど、いったいどこを調査したのかと首を傾げてしまう。経団連とか、経営者協会とかいう団体は、なぜこうも高い金額を発表したがるのか?

筆者は考えて合点がいった。

それらの団体は労働組合を意識しているのではないか。経営者団体は「こんなに高い給与や賞与を払っている。だから、もうこれ以上の引き上げは無理」だと労組に言いたい。そのために新聞発表をしているのだ。

一方の労組は職務上、「日本企業は労働分配率が低過ぎる」と経営者に迫ると同時に、組合員に対しては「労使交渉の成果として高い賃上げを獲得できた」とPRしたい。

だから、連合も負けじとばかりに高い金額を誇らしげに発表する。連合サイトを見ると「2014春季生活闘争最終集計。賃上げ(平均方式)2%を上回る、一時金水準は2008 年水準に回復。一時金は、年間分の月数回答は4.78 月(昨年同時期比+0.29 月)、額回答は1,539,022 円(昨年同時期比+87,625 円)といずれも増額となっている」と載っている。

当事者には失礼ながら、ニュースの発表者である経団連にしても、連合にしても存在感が低過ぎる。

そんな企業で勤務している社員は、日本の5000万人の勤労者の中で何%いるというのか! ごく一部のエリートの給与や賞与が上がったところで、全体の底上げにつながるのか!

これらのニュースソースの発表を鵜呑みにして報道する新聞社の見識も疑いたい。

官公庁や大手の発表をそのまま記事にするだけだったら、新聞記者などいらない。新聞記者だったら、自分の足で情報を得るという努力をして欲しい。

新聞を賑わす賞与の記事が実態を表していないことを、一般の人々は実感として感じている。だから冒頭のヤフーのアンケートには、以下のようなコメントが山のように寄せられているのだ。

「新聞報道では8万円増えたとあるが、どこの世界だろう」
「確かにいつも感じています。平均的世帯の収入例とか貯蓄額とかあれを見るたび心が折れる」
「ボーナスが増えているのは、架空のアベノミクスを支えるため政府に協力している、一部の大企業だけ。それも夏までだろう」
「企業の支給額は、ちょっと上がっても、税金や保険料などが天引き額も上がっているから、実質下がっていることも」

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