16年ぶりの高水準賃上げは、大手のエリート・サラリーマンだけ

政府は今春、アベノミクスによる景気回復を国民に実感してもらおうと、企業に対してベアを要請しました。閣僚の中には「賃上げできなかったらアベノミクスは失敗」だと発言する者もいました。

久しぶりに話題が多かった春闘ですが、新聞報道によると、政府の要請に応じて大手企業は積極的に賃上げをしたようです。経団連の第1次集計によると、定期昇給とベースアップ(ベア)などを合わせた月額の賃上げ額は平均7697円。16年ぶりに7000円超になったそうです(2014年4月16日発表)。また、連合も例年を大幅に上回った賃上げを獲得したと発表しています。

しかし、水を差すようですが、このような新聞報道は鵜呑みにはできません。

日本には多くの企業がありますが、その中で経団連に加入しているのはごく少数の大企業だけです(第1次集計は東証1部上場で従業員500人以上の企業41社が対象)。労組にしても、組織率が低下して現在は17.7%(厚生労働省調査)。つまり、「ベア」や「賃上げ」の実現は、一部の“大手企業のエリート・サラリーマン”に限定された話なのです。

国税庁の統計によると、民間サラリーマンは5400万人います。その年収はここ数年、ほぼ毎年のように落ちてきました。統計を細かくみると、減収した人の多くは中小企業に勤務していたり、非正規雇用だったりします。私は、サラリーマンの7割以上を占めるといわれる中小企業の社員の給与や、非正規従業員の給与までがしっかり上がらない限り、全体の底上げになったとは言えないと考えています。

4月、私が代表を務める北見式賃金研究所では、愛知県下に本社がある顧客企業(従業員数300人以下の中小企業34社)の3504人(男性2880人、女性624人)に賃上げに関する調査をしました。

果たして基本給は、昇給前と昇給後で、どう変わったか(諸手当の増減は対象外)。

まずは昇給の有無を、会社単位および従業員単位の双方で調べました。結果は次の通りです。