原理原則を知るのは楽しい

ところで、戦闘機のパイロットになるために入った航空自衛隊ですが、通信兵としての採用だったと後から知りました。このままでは夢が叶いません。パイロットになるには大学に入学し、航空機の操縦学生になる必要がありました。

高校の授業は埼玉県・浦和高校の通信課程を受講していましたが、卒業まで4年かかるというので、より早く資格を得ようと教育課程を2年半で習得して大検(大学入学資格検定)を受けました。結果は合格。しかし、交通事故で目を怪我した影響で目の調整力が低下。パイロットになる夢はあきらめざるを得ませんでした。

結局、5年9カ月で自衛隊を退官したのですが、その後、「日本で一番難しい試験に挑戦してやろう」と司法試験受験を決意、中央大学法学部の通信教育課程を受講し始めたのです。入学金や当初の学資は退職金で賄い、その後は各種のアルバイトです。

その中の一つだった水産会社での冷凍食品の営業。それが現在のビジネスへと結びついたわけです。商売の面白さを知った私は、大学は卒業したものの、方向転換してビジネスの道を選びました。

こんな“学生時代”を送ってきた私は、簿記会計などについても格別勉強した経験はありません。ただ、現在でも決算書は5分で読み切ります。

提出された書類を見て、すぐさま「ここは間違っているよ」と指摘。経理の責任者が1カ月がかりで作り上げたものを、たった5分、目を通しただけで誤りを指摘するのですから、担当者は「そんなはずはない」という顔つき。でも、検証してみれば間違っているとすぐわかります。

数字を頭だけで見るのではなく、仕事を通じて得た実感で見るから、ここはちょっと変だと感じ取れるのです。儲かったか儲かってないか、どこに金が、どれだけあるか。もっと在庫は少ないはずだ、現金・預金の数字が少なすぎる……などと私が指摘すると、発送済み商品を在庫にしたままでしたとか、保証金をまだ返却してもらっていませんでしたなどと、決算書類の間違いが判明します。

数字は“現場から出てくる”。だから“現場に教えてもらう”のです。自衛隊時代に体を通して歌を覚えたこととも通じるかもしれませんが、私は自分の体にしみ込んでいる体感で数字を見ているのです。

同時に、私はもともと数学や物理・化学のように物ごとの原理原則を理解したいタチ。一見複雑な決算書類も同じで、原理を知れば少しも難しくはありません。原理原則を知るのは楽しいですね。

(小山唯史=構成 小原孝博=撮影)
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