確かにバイトであれば、自分に合わないと思えば辞めてしまえばいい。売り手市場となっている現状であれば、より楽しく働ける職場を探してさまざまな職場を渡り歩くことも可能だ。
「実はそれに続いて重要視されているのが教育です。きちんとした教育、研修を受ける機会を与え、その努力を反映する仕組みがあるかどうか。バイトも厳しい目線で企業を評価しています。とはいえ、100人のバイト全員が向上心を持ってバイトを始めるわけではありません。でもやる気のある人間を50人に増やせるか、80人に増やせるかが問われています。やる気にあふれた人材が増えれば、それで企業の雰囲気が変わります。そういった環境がすでにできている会社や、人材枯渇を認識し、テコ入れを始めた会社でなければこれからは生き残れません。5年後、10年後には労働人口はさらに減ることは間違いないわけですから」
バイト情報誌「タウンワーク」の刊行やバイト募集サイト「フロム・エー ナビ」の運営を行うリクルートジョブズ。企業求人に長年携わる宇佐川邦子リサーチセンター長は変革が必要だと説く。
「これまで企業は、経験がなくても元気があれば育成はできるという考えのもと、若い労働力ばかり獲得してきました。しかし現実には若者が減っています。この構造的なミスマッチは10年ごろからずっと存在していて、それが顕在化しただけなんです。構造的な問題ですから、時給を上げれば解決するような単純な問題ではありません。例えばコンビニや牛丼屋では深夜の時給がぐんぐん上がったりして1500円というところもあります。でもそういう募集広告を見たときに、『このバイトは大変だったり、めんどうなことをやらされるから高給なんだろう』と考える人はたくさんいるんです。そうなってくると大事なのは、そこで働くことが『かっこいい』とか『ためになる』といった付加価値があるか、もしくは働きやすい環境を整備できているか、そしてそれらをわかりやすく人々に示すことができるかということです」