ラジオ局とWin-Winの関係を築く

――そうした逆風の時代におけるTuneInの経営戦略は何か?

【信川】当面はコミュニティFM局やプロスポーツの運営会社にターゲットを絞っていく。すでに、ネットラジオでの成功例づくりをめざして提携しているのがFM世田谷。私はここの地域に根ざしたローカル性と時代の風をキャッチする報道姿勢に魅力を感じた。彼らは、東日本大震災後の東北のイベントに出かけたりする。提携後は、我々のコミュニティFM局一覧の上位にFM世田谷を置いてPRしたり、局側は番組などでTuneInの宣伝をしてもらっている。こうした効果により、いまは10万人以上が聴いているはずだ。

――プロ野球球団の楽天イーグルスの「EAGLESTATION(イーグルステーション)」という球団自主放送を展開している。

【信川】昨年の10月からスタートしている。球団にしてみれば、仙台のみならず、全国や海外にファンを開拓したいというニーズが強い。一方、当社もリスナーを増やしたいという思いがある。双方の利害が完全に一致した。本放送を開始してすぐに数千人規模のリスナーが集まった。また2週間後にファイナルシリーズのロッテ戦があり、TuneInのプッシュ通知機能で全国に告知した。すると、15万人以上のリスナーが聴いてくれ、そのうち1%程度が海外からのアクセスだった。この結果、同じ楽天傘下のJリーグチームであるヴィッセル神戸の放送もTuneInのサイトに載っており、間もなく正式にインターネット放送を開始する。

プロスポーツの会社が広く情報を発信したい背景には、グローバル化によるファンの獲得はもとより、観戦チケットとグッズの拡販などにつなげたいという 目的がある。TuneInにドイツのブンデスリーガ(サッカー)や英国のプレミアリーグが母国語だけでなく数カ国語で放送しているのも、そのためにほかならない。そして、その狙いはかなりの確度で達成されているとみていい。こうして、提携先とWin‐Winの関係になることが、当社のメリットにもつながっていく。