社長に就任して初の決算で800億円の赤字を計上するも、翌年には見事、V字回復を実現したコマツの坂根正弘相談役。同社を日本有数のグローバル企業に育てあげた手腕を評価され、現在は産業競争力会議や国家戦略特区諮問会議の民間議員を務めている。アベノミクス第3の矢、成長戦略は本当に日本経済を復活に導けるのか。

国家戦略特区でどう変わるのか?

【田原】いまアベノミクスで、農業や医療などを特区でやろうとしています。坂根さんは国家戦略特別区域諮問会議の民間議員です。特区で具体的に何をやるのか、教えてもらえますか。

【坂根】小泉改革のときに構造改革特別区域がありましたよね。あれ、じつは全国に約600ありました。

【田原】600も? ぜんぜん覚えていない(笑)。

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「国家戦略特区」の概要(3月28日発表)

【坂根】私も聞いてびっくりしました。みんなすっかり忘れているのだから、はっきりいって失敗です。じゃあ、なぜうまくいかなかったのかというと、当時は特区をつくることが目的になっていた部分があったんじゃないかと。本当なら国から言われてつくるのではなく、自治体のほうから「うちの県はこうやって成長したいが、規制があって難しいから特区にしてくれ」という戦略が必要ですよね。しかし前回は、そうしたトップダウンとボトムアップのつながりがないまま特区をつくってしまった。

【田原】今回は違うのですか。

【坂根】今回は国家戦略特区会議で農業や医療、雇用などの分野について国として取り組みたいテーマが明確に示されているので、これらの分野で重点的に特区をつくります。ただ、やはりその地域の成長戦略があり、その中で特区が必要だという因果関係が大切。まずそれがあって、「テーマと結びついているかどうか本気度をしっかり審査しましょう」と私は主張しています。いまはその最終的な絞り込みの段階です。(注:3月28日、政府は国家戦略特区諮問会議で、特区の第1弾として「東京圏」「関西圏」「沖縄県」「新潟市」「兵庫県養父市」「福岡市」の6カ所を指定した。図参照)