デフレの逆風の中で、キヤノンを成長へと導いてきた御手洗冨士夫会長兼社長。デジカメ市場が縮小したいま、次の一手は何なのか。経団連会長を務めた後も経営の最前線で舵を取り続ける御手洗氏に、田原氏が鋭く迫った!

御手洗冨士夫氏

【田原】御手洗さんは僕とそう年が変わらないのに、お若いですね。元気の秘密は何ですか。

【御手洗】とくに何か気をつけていることはないのですが、あえて言えば早寝早起きでしょうか。毎朝4時ごろ起きています。

【田原】4時? そんなに早く起きて何をするのですか。

【御手洗】日経新聞の電子版を読みます。ニューヨークは昼間ですから、為替や長期金利、向こうのウォールストリートの市況がわかる。それをじっくり読んで、会社には7時前に着きます。

【田原】トップの会長が7時に出社すると、社員は大変じゃないですか。

【御手洗】そうですね、会社が始まるのは8時半ですが、7時には役員が全員そろっています。でも、これは私が始めたことではなく、朝会というキヤノンの伝統です。それで、7時45分くらいには役員会議室に集まってきて、8時半まで意見交換をする。そのときに毎朝読む新聞がネタになるわけです。

【田原】なるほど。

【御手洗】ちなみにキヤノンに役員専用のフロアはありません。朝会の後は、現場の一角にある各自の部屋に散らばっていきます。

【田原】おもしろい。ホンダもワイガヤ精神で、役員室をつくらなかった。

【御手洗】うちは役員食堂もないですから。私もみんなと同じ食堂を使っていますが、私が並んでいても、誰も順番を譲ってくれない(笑)。

【田原】ところで経団連会長を終えると、社長や会長をやめる人が多いですね。御手洗さんはお若いけれど、一方で、なぜ引退せずいつまでもトップにいるのかという批判もある。ご自分では、どうお考えですか。

【御手洗】批判はよくわかります。必ずしもすべてではありませんが、日本では、組織のトップは上がりポジションになっている傾向があるのではないでしょうか。たとえば官僚もそうかもしれませんし、大臣にもそういった例が少なからずあるように思います。日本の会社もだいたいそうで、トップを数年やって引退する。