【田原】絞り込みは順調ですか。

【坂根】大きく挙げると、2つのアプローチがあります。1つは大特区。たとえばいま外国から駐在員がきても、東京や大阪が住みやすいかというと、必ずしもそうとは言えません。体調を崩しても、どこの病院なら英語で診察を受けられるのかわからないし、子どもの小学校がないところもある。外資を呼び込もうと思ったら、そのあたりの規制緩和が必要です。こういう特区が必要なのは大都市で、数を絞ってスタートしようとしています。一方、地方は事情が違う。たとえば農業はほとんどの地方が関係しているので、どこか1カ所でやるのではなく、いくつかでやり、かつ早期に全国レベルに普及できるようにやろうとしています。いまこの2つのアプローチで進んでいます。

【田原】農業の話が出たのでお聞きします。地方の農業、どうしますか。

【坂根】じつはここ2年くらい、経団連も農業の問題にまじめに取り組んでいます。うちは石川県小松市が発祥の地なので、小松市を元気にするための取り組みも行っています。最近では社員研修やグローバル会議を行うための施設を作ったり本社機能を移管しました。ただ、それだけじゃ足りない。うちの小松市の工場で働いている人の1割は兼業農家という事実があるように、結局、農業が活性化しないと小松市も元気にならない。

【田原】具体的には何か支援を?

【坂根】うちが農業をビジネスにしようとは考えていません。ただ、農業を事業として育てるための知恵出しのお手伝いをすることはできます。具体的には生産性の高い加工工場を作ったり、ファンドをつくって、コマツがお金を出すから、地元の銀行もお金を出してくれと。今回、県も出すことが決まって、三者でファンドをつくることになりました。

【田原】それはコマツにとってプラスになるのですか。

【坂根】若い人たちが地元にとどまってくれないとうちの工場も成り立たないので、農業支援はわれわれの利益にもなります。まあ、そうはいっても社会貢献の意味合いが強いですね。